(VOVWORLD) - 毎年旧暦7月7日、ベトナム中部のハティン省では「ラップロー祭」という特別なお祭りが開かれます。ラップローとは「穴を埋めて種を蒔く」という意味で、農作業がひと段落ついたことを祝う、いわば豊作祈願祭です。
ハティン省にあるチュット族の集落「ラオチェ」 |
(現場の音)
このお祭りを主催するのは、チュット族という少数民族の人々。現在わずか157人しかいない、とても稀少な民族です。彼らにとってこの日は、豊作への感謝を天地に捧げ、来年の豊穣と家族の幸せを祈る、一年で最も大切な日なのです。
お祭りの会場は森の縁に設けられ、質素ながらも神聖な供え物が並べられます。ラオチェ村の村長、ホー・ティ・キエンさんは次のように話してくれました。
(テープ)
「私たちの文化的アイデンティティは、何としても守り続けなければなりません。自分たちの特色を大切にしながら、より豊かな生活を築いていこうと、村の皆に呼びかけています」
さて、このラップロー祭は二部構成になっています。まず神聖な「儀式の部」から始まります。
(現場の音)
村の中央に祭壇柱と4本の竿が立てられますが、これらは東西南北を象徴する神聖な柱なのです。天界と地上を結ぶ神木として崇められ、神々を招き降ろすための目印となります。
ラップロー祭を祝う横断幕で彩られた村の道や小道 |
柱を立てた後、村民たちは手分けして供え物を準備し、厳粛な行列を組んで祭壇まで運びます。川の神、山の神、森の精霊、そして先祖の霊を祭りに招くためです。
特に印象的なのは、村の長老による神占いの儀式。半分に割った竹片2枚を斧の上に置いて、神々が村を災いから守ってくださるよう祈願します。占いを終えると、祈祷師は祭壇の皿から米をひとつまみ取り、四方に撒いて精霊や神々を招きます。
そして神事が終わると、いよいよお楽しみの「祭りの部」の始まりです!
(現場の音)
太鼓の音が響く中、青年男女や村民たちが祭壇の柱を囲んで踊りの輪を作ります。山の民らしい力強く素朴な舞踊で、歌声も高らかに響きます。綱引きや棒押し、サッカーの親善試合なんかも行われて、とても賑やかです。
特に素晴らしいのは、チュット族の伝統的な音楽の演奏です。竹製の管楽器「チューラボン」と「ピー笛」という笛を組み合わせた、とても美しい音色が聞こえてきます。また、輪投げや綱引きなど、昔ながらの遊びでも大いに盛り上がります。
村の女性、ホー・ティ・タオさんは嬉しそうに話してくれました。
(テープ)
「私たちのラップロー祭は本当に楽しいお祭りです。各方面からたくさんの支援をいただいて、みんなとても喜んでいます」
ハティン省の行政関係者は、このお祭りを地域の文化観光資源として育て、村の経済発展にも役立てようと考えています。同時に、若い世代にチュット族固有の文化的価値を理解してもらう、貴重な機会でもあるとしています。
現在、チュット族はハティン省のカダイ山麓で46世帯157人が暮らしています。ラップロー祭は、この小さなコミュニティの人々が一年に一度集まって、文化交流を深め、結束を強める大切な機会となっています。