クメール族の結婚式を彩る伝統音楽「アー・ザイ」

(VOVWORLD) - ベトナム南部に暮らすクメール族の結婚式では、式の始まりから終わりまで、伝統音楽が欠かせません。それぞれの儀式には専用の曲があり、祝いの日を華やかに盛り上げています。
クメール族の結婚式を彩る伝統音楽「アー・ザイ」 - ảnh 1

(結婚式の「ロム・ニエン」という歌)

クメール族の結婚式は、一つひとつの儀式に深い教育的な意味や人生の教えが込められています。そして、それらの儀式に寄り添うのが、民族の伝統を色濃く映した「アー・ザイ」と呼ばれる歌です。

アー・ザイは、歌と踊り、音楽、そして詩が見事に融合した民俗芸能です。多くの研究者によりますと、アー・ザイは、クメール社会に古くから伝わる『プロップ・カイ』、つまり掛け合い歌から発展したものです。男性側と女性側が拍手でリズムを取りながら、互いに歌で応酬していたとしています。この掛け合いの形式から、民間では「アー・ザイ掛け合い歌」とも呼ばれています。

南部のカントー市では、今もアー・ザイの伝統が受け継がれています。ミー・トゥー村に住むリー・フエンさんは、伝統楽団について次のように話します。

(テープ)

「私たちの楽団には、2本のダン・コーという弦楽器をはじめ、ダン・クム、チャー・パイ、太鼓、パイ・オー、それにチャップ・チョアという打楽器があります。全部で7つの楽器を使いますが、中でも最も重要なのが、曲全体をリードするパイ・オーです。次に大切なのがダン・コーで、これらの主要楽器が欠けると、良い演奏にはなりません」

(クメール結婚式の音楽)

アー・ザイの歌唱は一見シンプルに聞こえますが、実は高度な技術が必要です。歌い手は、喜びやからかい、皮肉、怒りといった様々な感情を、抑揚をつけて表現しなければなりません。そうでなければ、歌に込められた意味を十分に伝えることができないのです。

クメール族の結婚式を彩る伝統音楽「アー・ザイ」 - ảnh 2

結婚式では、それぞれの儀式に合わせた曲が演奏されます。ラム・タン村のザン・イエンさんが詳しく教えてくれました。

(テープ)

「式が始まると、まず新郎側が結納品を運ぶ儀式で『プレス・レム・チョン・タナル』という曲を演奏します。続いて『スダック・デアン』で新郎を新婦の家へ導き、『バイ・クン』に合わせて門を開ける踊りを披露します。手を結ぶ儀式、結納品の説明、そして最後の糸切りの儀式まで、それぞれに専用の曲があるんです」

現代音楽が人気を集める今日でも、クメール族の伝統音楽は芸能者たちによって大切に守られています。ザン・イエンさんは、次のように続けます。

(テープ)

「最近、クメール族の人々が再び伝統音楽を好むようになってきました。私たちは省内だけでなく、省外からも依頼を受けて演奏しています。演奏の機会も以前より増えました。ただ、収入はそれほど多くありません。でも、お金のためだけにやっていたら、誰もこの伝統を守ろうとはしないでしょう。料金を高くしすぎると誰も頼んでくれなくなり、音楽が消えてしまいます。ですから、適正な価格を心がけています」

クメール族の結婚式音楽は、民族の貴重な無形文化遺産です。曲や歌詞には、夫婦が道徳を守り、絆を深め、子孫を教育するための教えが込められています。この独特な文化を次世代に伝えていくため、保存と継承の取り組みが続けられています。

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