少数民族クメール族の「コム」とは


ベトナム南部メコンデルタに居住している少数民族クメール族の独特の食べ物の一つは青いもち米から作られる「コム」というお馴染み食べ物です。コムは単なる食べ物ではなく、深い精神的意義のある文化的な食べ物でもあります。

普通のお米やもち米は稲が黄金色に色付いてから収穫しますが、このコムを作るもち米は稲穂が未熟のうちに収穫して加工されます。青は若い稲の色なのです。コムは餅菓子や料理に使うこともありますが、旬のものはシンプルにそのまま食べるのが一番美味しい食べ方です。

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コムを作る青いもち米(写真:ngoisao.net)

このコムは、クメール族の最大行事の一つであるオク・オム・ボク祭りで供物として使われ、豊作を恵んだ神に対する感謝の気持ちを表すためのものなのです。

オク・オム・ボクとはクメール語で、月の神様を礼拝して豊作を祈願するという意味です。クメール族の信仰では、月の神様は天候と作物を管理するのです。オク・オム・ボク祭りで一番重要なのはお月さまを礼拝する儀式で、この儀式は旧暦の10月15日の夜に行われ、場所はお寺でやるのが一般的ですが、家で行なうこともあります。

月が昇ると、村人は月に向かって儀式を始めます。儀式はお寺の僧侶か村で威信が高い長老が司ります。礼拝が終わった後、主宰者は、子どもにコムをやりながら、希望を聞きます。子どもの答えは村人の希望にもなります。最後に、みんな、コムや果物を食べながら、歌を歌ったり、お互いの豊作を祝ったりします。ソクチャン省に住むクメール族のチャン・ヴァン・ナムさんは次のように話しました。
(テープ)

「10月15日に、各家族はみな、コムを作ってお月さまを礼拝しますよ。礼拝が終わってから、子どもを集めてコムを食べさせます。これは豊作を下さったお月さまを思い出すためです。庭で行われるのが一般的です。家族はお年寄りから子どもまで全員がお月さまを拝まなければなりません。」

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子どもにコムを食べさせてやる習慣
(写真:soctrangtoday.com)

クメール族の人々は、神様のおかげで米をいただくと信じています。こうした米から、美味しい食べ物を作り、神様の恩に報います。その中で、一番重要なのはコムです。ソクチャン省に住むラム・ティ・エンさんは次のように話しています。
(テープ)

「貧富の差をとわず、どの家でもコムを作り、お月さまを拝みます。昔の習慣に従って、代々受け継いだやり方でコムを作ります。」

コムはオク・オム・ボク祭りの供物として使われるだけでなく、祖父母や親に差し上げるプレゼントでもあります。

美味しいコムを作るには、まずちょうどいいもち米を選ぶことが大事です。熟しすぎても若すぎでもダメなのです。そのもち米を数分間水に浸けておきます。次は、土でできた鍋に入れて、いい香りが出るまで中火で炒ります。その後、 臼にれて杵でついて籾殻を除きます。

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臼にれて杵でついて籾殻を除きます。

籾殻を除いたばかりのコムにはココナツのジュースと砂糖を入れて、よく混ぜた後、柔かくなるまで15分ほどそのままにしておきます。出来上がりのコムはそのまま食べてもいいですが、「バン・チャン・ゴット」や「バン・フォン」などクメール族の伝統的なお菓子と一緒に食べるのが最高です。そして、バナナか蓮の葉で包むと、その葉の香りがコムにくっついてさらに美味しくなります。もしオク・オム・ボク祭りへ行くならば、クメール族特産「コム」を味わいながら、この民族ならではの文化を楽しむことができるでしょう。

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クメール族のコム(写真:ngoisao.net)


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