山岳少数民族パジグループの民族衣装に映し出された農耕文化

(VOVWORLD) - 山間の自然に囲まれたパジグループの人々は、木々や野菜を慈しみ大切にしています。その思いが衣装の模様に表れ、トウモロコシの実やインゲン豆、ヒョウタンの花などをモチーフにした一年の喜びが服に溢れています。 

ベトナムには53の少数民族が暮らしますが、その中でもテイ族に属するパジグループは人口がわずか2000人余りと最も小さな民族のひとつです。ラオカイ省ムオンクオン県を中心に居住するこの民族は、農林業を生業としています。主な作物は桃、梨、パルダン、茶、大豆、トウモロコシ、米などで、彼らの生活は作物に大きく支えられてきました。そうした農耕生活から生まれた創造性が、独自の民族衣装に表現されています。

山岳少数民族パジグループの民族衣装に映し出された農耕文化 - ảnh 1パジグループ女性の衣装

パジグループ女性の衣装は、自然素材を使い藍色に草木染めされています。上着はアンクル丈のロングシャツで、右側に留め具があります。藍色地には白と青のパイピングが施され、両脇に白い布が縁取られています。胸元には小さな銀の球が縫い付けられ、棚田の景色を思わせます。ムオンクオン県に住むチャン・レン・ジンさんは次のように語りました。

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「昔のおばあさんたちは二重の上着を着ていました。棚田の畝のように重なり合う模様が刺繍されていたのです。銀の球は、私たちの作物であるトウモロコシや落花生、豆の実を表しているのです」 

長年パジグループの人々と共に暮らし、ラオカイ省大衆工作委員長を務めたリー・セオ・ジンさんは、熟練の技と装飾の意味について次のように説明します。

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「パジグループの衣装は本当に独特の雰囲気があります。胸元の刺繍は棚田を思わせ、整然と並んだトウモロコシの実のようですね。女性の器用さと努力によって、この精緻な刺繍が生み出されます。経済的に恵まれない場合は銀の装飾を少なくせざるを得ません。一方で裕福な家の衣装には、実際のトウモロコシやインゲンマメのように大ぶりの銀の球が付けられ、身分の高さを示しています」

山間の自然に囲まれたパジグループの人々は、木々や野菜を慈しみ大切にしています。その思いが衣装の模様に表れ、トウモロコシの実やインゲン豆、ヒョウタンの花などをモチーフにした一年の喜びが服に溢れています。 

パジグループの襟元にも芸術性が宿ります。立ち襟は青と赤の布を2枚合わせたもので、小さな銀の球を2列に縫い付け、中央に大振りの銀の留め具があります。これは陰陽のシンボルだということです。さらに青のスリムな帯で引き締められたウエストラインは、艶やかさを誇示します。帯の裾からは、ピンク、紫、オレンジの刺繍の房が覗き、遠目からも女性の優雅な佇まいを醸し出します。加えて濃緑や黄緑の布を裾に縫い付け、歩く度に色とりどりの布が覗くよう工夫されています。ムオンクオン県のポー・チン・ジンさんの話です。

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「私たちの服作りは、代々受け継がれた技術に則っています。ズボンや上着は全て女性の手作りなのです。結婚式や祝い事には、こうした伝統の民族衣装が欠かせません」

最も印象的なのが大きな家の屋根を形どった頭巾でしょう。女性たちは布に何度も蜂蜜を塗り重ね硬化させ、頭頂部を折り曲げて屋根の形を作ります。頭巾の縁には白い銀の球を三角模様に縫い付け、パジグループの人々に欠かせぬトウモロコシや米の実を表現します。先ほどのリー・セオ・ジンさんはさらに次のように語りました。

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「この屋根型の頭巾は、母が家族を守り育むようにとの願いを込めています。頭巾の縁には、自然と人間を表す精緻な銀の装飾が施されているのです」 

かつらのように高く結い上げた髪の上に、この頭巾を被せます。前頭部は固定するため巻き付けられます。自由な動きを妨げることもなく、落ちる心配もありません。先ほどのポ・チン・ジンさんも次のように付け加えました。

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「髪を頭頂部に結い上げ、スカーフを巻いて屋根を形取った頭巾に被せます。頭巾の縁に付けられた球体は銀でできていて、祭りや結婚式に被る伝統的な頭巾なのです」 

この屋根型の頭巾は家族の繁栄と裕福さを象徴するため、婿入り婚の際には婿側の母親から新妻に贈られる習わしがあります。さらに鶏や魚の模様を銀細工した装身具も、女性の装いに彩りを添えます。これらの装身具には富と幸福、自然との調和への願いが込められています。

2020年、パジグループの民族衣装に施された装飾芸術は、ベトナムの文化スポーツ観光省により国家無形文化遺産に認定されました。

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