12月10日は1982年にUNCLOS国連海洋法条約、(以下条約という)が採択されてから30周年となります。これを機に、国家国境線委員会の委員長を務めているベトナム外務省のホー・スアン・ソン( Ho Xuan Son)副大臣は「1982年の国連海洋法条約・海の憲法」をテーマとした記事を執筆しました。今日のこの時間はその記事の内容をお伝えします。

条約は、1973年に始まった第三次国連海洋法会議において、ベトナムを含めた150カ国以上が参加する複雑な交渉を経て採択された、320条と9項目の付録からなる包括的条約です。条約は1994年11月16日に発効し、条約締約国は164カ国と地域にのぼっています。
UNCLOSは海洋の利用と資源、環境にかかわるすべての活動のための法的枠組を定める、まさに「海の憲法」ともいわれる基本的文書です。それは海の法秩序に革命的変革をもたらすとともに、それまで曖昧であった多くの規則を明確にし、国家の慣行を統一しました。
とくに、多くの国が3海里、12海里等異なる幅を主張し、外国船舶の航行に障害となっていた領海を、条約は12海里と定めました。また、沿岸国による一方的拡大が危惧されていた大陸棚の範囲を限定し、さらに諸国家が一方的に設定し始めたEEZ排他的経済水域の制度を確立し、深海底とその鉱物資源を人類の共同財産と指定し、その開発を管理するための国際海底機構を設立しました。また海洋環境の保護・保全にかかわる基本的義務や原則を定め、その後出現した国際環境法の土台を築く役割も果たしました。こうして、さもなければ多発したであろう諸国家間の紛争を防ぎ、国際平和の維持に大いに貢献してきたといえます。
1994年6月23日、ベトナム国会はこの条約の批准に関する決議をし、その中で、「ベトナム社会主義共和国は1982年の国連海洋法条約の批准により、国際社会と協力して、公平的法的秩序の構築に対する決意を示し、海上における発展と協力の奨励に寄与する」と強調しました。ベトナムがこの条約の締結国になったのは非常に重要な意義を持っています。その理由は条約はベトナムの領海や排他的経済水域、大陸棚を含め、海上におけるベトナムの正当な権利と利益を認める法的基礎となるからです。また、条約は南シナ海におけるベトナムと近隣諸国との領海の紛争を解決する法的基礎となります。
ベトナム外務省のホー・スアン・ソン副大臣によりますとこれまで、ベトナムはこの条約を基礎に、1997年にタイとの海上境界線を、2000年に、中国とバクボ湾、いわゆる、トンキン湾内における海上領海線、排他的経済水域、大陸棚の境界線を、2003年にインドネシアとの大陸棚の境界線を画定するため、交渉を行いました。条約批准してから18年後の今年6月21日行われた第13期ベトナム国会第3回会議で、ベトナムはベトナム海洋法を採択しました。ベトナム海洋法は条約の内容を基礎に、ベトナムが領有権を主張している海域、島などを明記しました。ベトナム海洋法の採択により、ベトナムは国際社会における責任があり、国際法を遵守するメンバーであるとともに、地域と世界の平和、安定、協力、発展のため取り組むベトナムの決意を示しています。
ベトナム東部海域、いわゆる、南シナ海の情勢が複雑に推移している背景の中で、ベトナム共産党と政府は条約を基礎に、関連各国の独立・主権・領土保全を尊重しながら、南シナ海における紛争を解決することを主張しています。