ベトナム東部海域いわゆる南シナ海での領有権紛争の解決を目指すCOC=南シナ海行動規範の作成プロセスは新しい兆しを見せています。中国とベトナムなどASEAN=東南アジア諸国連合の複数の加盟国が対立しているこの問題について、中国とASEANは10月29日、タイで非公式の高官協議を行い、紛争を平和的に解決することを目指した行動宣言の実行に向け、協議を続けていくことで合意しました。
この非公式の高官協議は、領有権を巡り、中国とフィリピンやベトナムなどとの間で対立が深まっている南シナ海問題について意見を交わすため、タイで行われました。協議では、南シナ海の安定が双方にとって重要な利益であることを認識した上で、紛争を平和的に解決することを目指す「行動宣言」の実行に向けて協議を続けていくことで合意しました。中国と共同議長を務めたタイのシーハサック外務次官は会合後に記者会見し、「今後も対話を続け、どのように行動規範を作るか話し合う」と語りました。
ASEANのスリン・ピッスワン事務局長は30日クアラルンプールで、この領有権紛争問題に言及し、「この紛争は武装衝突にエスカレートする危険性があるものの、中国とASEAN諸国は積極的な姿勢を示し、緊張を緩和している」 との見方を示しています。事務局長は「29日タイで開かれた南シナ海問題についてのASEAN・中国非公式高官級会合は積極的な兆しを見せた」とし、「双方はCOCの早期作成を望んでいる。これは関係各国の利益に影響を与える問題である。困難はあるものの、双方は対話を行うことに合意した」と評価しました。
一方、タイ外務省広報担当者は「中国は行動規範の将来的な策定に向けた議論を導くために、相互信頼を築く対話を継続することを望んでいる」と明らかにしました。
しかし、この協議に出席した中国の傅瑩(ふ・えい)外務次官が行動規範策定について「信頼できる環境を作る必要がある」と述べ、時期尚早との見方を示したことから、COCが早期に策定されることを楽観視できないとの意見もあります。
ベトナム東部海域での領有権問題を巡っては、実効性のあるルール作りを求めるASEAN側と中国側との温度差が表面化しており、来月カンボジアで開かれる中国とASEANの首脳会議で溝が埋められるかが焦点となっています。