欧州議会選挙の結果が発表されました。これによりますと、751の議席のうち、中道右派の「ヨーロッパ人民党」や中道左派の「社会民主進歩同盟」がともに議席を減らすものの、二大会派が過半数を占める構図には変わりがありません。

(写真:
Le Monde)
しまし、極右政党などEU統合に懐疑的な勢力が議席を大幅に増やし、今後のEUの政策にも影響を及ぼす見通しです。
極右政党の躍進
フランスの極右政党「国民戦線」が初めて国内で最も多く票を集めたほか、イギリスでもEUからの離脱を訴える「イギリス独立党」が国内で最多の票を獲得し、各国でEU統合に懐疑的な勢力が支持を伸ばし、総議席の約2割を占めました。
フランスの国民戦線の得票率は前回のおよそ4倍の25%に達しました。一方、イギリスではEUからの離脱を唱えるUKIP=独立党が躍進する一方で、連立与党の保守党と自由民主党が大幅に議席を減らしました。
有権者の信頼問題
今回の選挙の有権者は3億8800万人ですが、公式発表によりますと、選挙の投票率は43.1%にとどまりました。背景には、信用不安問題を受けて緊縮策が進められた結果、失業率が過去最悪レベルになっていることへの不満や、各国の予算の監視などEUの権限が強化されたことに対する反発があるとみられています。
EUに懐疑的な勢力は、会派を結成して連携していく意向を示しており、そうなればEUの執行機関である欧州委員会の委員長選びや、日本などとの間で進めている自由貿易交渉など今後のEU政策にも影響を及ぼす見通しです。
将来の方向
この結果を受け、EUの指導部は懸念を示しています。フランスのマニュエル・バルス首相は、投票結果について「フランスの全政治家に対する新たな警告、衝撃、地震」であり、早急に政治と経済改革を推し進める必要性を示しているとコメントを出しました。
また、EUは27日、ベルギーの首都ブリュッセルで首脳会議を開き、選挙結果を分析するとともに今後の対応などに ついて議論を交わしました。席上、EU改革を求める意見が相次ぎました。フランスのオランド大統領は会議後の記者会見で、「選挙を通じて多くの市民がEUに疑問を抱いていることが明らかになった。
EUは成長や雇用、それに投資 の促進に力を入れなければならない」と述べ、EUの政策を見直す必要性を強調しました。また、イギリスのキャメロン首相は「EUはこの結果を見過ごしてはならず、変革が必要だ。EUは大きくなりすぎた」と述べ、EUに集中した権限を各国に戻すべきだとの考えを示しました。
こうした中、アナリストらは「EUは改革を行わなければならない」とし、EU指導部に賛同の意を表わしている一方、その改革をどのような方向に進めるかが焦点となっていると指摘しています 。