IMF=国際通貨基金とWB=世界銀行の年次総会は9日東京でで今週末までの日程で開幕しました。各国政府の高官や、中央銀行総裁、企業経営者合わせて約2万人が参加しており、ユーロ圏諸国の危機の解決策、世界経済の衰退に歯止めをかける措置、発展途上諸国を支援する方法などについて討議しています。
国際世論は今回の総会に期待をかけていますが、「世界経済の現状から見れば、楽観視できない」との見方が出ています。また、「日本・中国や、アメリカ・中国など各経済大国間の関係の緊張が総会の成功を阻む」との懸念も浮上しています。
総会日程の最初に、IMFは世界経済見通しの10月改定版を発表し、2012年の世界の成長率は3.3%と、7月時点の予想を0.2ポイント引き下げました。修正は小幅ですが、2010年や2011年と比べると、今年は減速します。来年は3.6%への回復を見込みますが、7月予想より0.3ポイント下方修正しました。
IMFのブランシャール経済顧問は9日、「世界経済は回復を続けているが、回復力は弱まっている」と述べ、先行きに懸念を表明しました。減速の要因としては「財政再建が需要を減らしているほか、欧州を中心に金融システムが不安定だ」と指摘しました。
こうした中、各経済大国間の関係悪化も世論の懸念を引き起こしています。総会直前、中国は同国の閣僚級が欠席すると発表しました。世界2位の経済大国の中国の謝旭人財政相と周小川中国人民銀行総裁がIMF・世銀総会への出席を見送ることは、日本の尖閣諸島(中国名・釣魚島)国有化への対抗措置の一環とみられていますが、金融分野における国際協調のほか、IMF改革や日本・中国の金融協力にも影響が出そうです。
総会に先立った2日、IMFのラガルド専務理事は日中関係の悪化について、「世界経済は両国の完全な 貢献を必要としている。領土問題での混乱は避けてほしい」と早急な対立解消を呼びかけました。円高基調が続く為替では「無秩序な変動は世界経済の脅威だ」と述べ、 相場安定へ各国の協調を促しました。
日中関係のほか、アメリカ・中国関係も様々な問題を抱えています。アメリカ下院情報特別委員会は8日、「ファーウエイ・テクノロジーズとZTEという中国の通信機器大手企業2社が製造した部品を使用すると、スパイ行為にさらされる危険があり、アメリカの安全保障に脅威を与える可能性がある」として、アメリカ政府のコンピューターシステムに一切使わないよう求める報告書を公表しました。
これに対し、中国商務省は9日、「強く抗議する」との声明を発表し、その中で、「安全保障を理由に、正当な営業活動や競争から中国企業を排除するものだ」と批判し、「アメリカが一貫して唱える自由市場の原則に反し、両国企業双方の市場開拓、協力にマイナスの影響を及ぼす」と警告しました。
以上指摘された背景の中で開催中のIMF・WB総会が期待通りの成果を収めるかどうかが焦点となっています。