18日、アフガニスタンのカルザイ大統領は、駐留アメリカ軍などNATO=北大西洋条約機構軍に代わり、国内全土でアフガニスタン治安部隊が治安維持の指揮権をとると宣言しました。治安権限移譲は2011年に国内各地で順次始まりました。NATO軍が軍事作戦を継続する約90地区の指揮権は今後数カ月でアフガニスタン治安部隊 へ完全に移譲されます。
現在アメリカ軍約6万6000人を含むおよそ10万人いる駐留外国軍は、アフガニスタン軍の訓練など後方支援に回り、2014年の任務完了へ向け順次撤収します。
NATO軍がアフガンから撤収(写真:To quoc)
カルザイ氏は首都カブールで、NATOのラスムセン事務総長らを招いて治安権限移譲式典を開き、「今日は歴史的な日だ」と語りました。事前予告なしにアフガニスタンを訪問したラスムセン事務総長は「10年前にアフガニスタン国軍は存在しなかった。今日、 35万人の強大なアフガニスタン軍・警察がある」と語り、アフガニスタン人部隊の育成を強調しました。
カルザイ氏は会見で、旧支配勢力タリバンに、来年予定されるアフガニスタン大統領選挙に参加するよう呼びかけました。カルザイ氏が治安権限移譲を進めてきた背景には「外国軍駐留」を理由に攻撃を続けるタリバンに対し、政権側との和解や政治参加を促す狙いもあります。
しかし、式典開始直前に会場近くで爆発があり、住民3人が死亡、約30人が負傷しました。警察は、イスラム教 シーア派指導者で著名なハザラ人政治家のムハンマド・モハキク氏の車列を狙った仕掛け爆弾によるテロと断定しました。モハキク氏は無事でしたが、武装勢力の 攻撃能力を印象付けました。首都への攻撃は10日のカブール国際空港襲撃、11日の最高裁を狙った自爆テロに続き今月3度目となっています。
こうした中、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンとの協議に臨むアメリカのアフガニスタン・パキスタン特別代表ドビンズ氏が協議予定地のカタールへの出発を遅らせている ことが19日、分かりました。20日に予定されていた協議が数日延期される可能性が出てきました。
タリバンがカタールの首都ドーハに設置した対外事務所にタリバン統治当時の国名を掲げ、アフガニスタンのカルザイ大統領が強く反発したことが主な理由とみられます。アメリカのケリー国務長官は18日と19日にカルザイ氏と電話会談し、日程などの再調整を進めました。
アナリストらは、現在の状況から見れば、アフガニスタン情勢は今後も引き続き複雑に推移すると予測しています。