アメリカで制作された映像がイスラム教の預言者ムハンマドを侮辱したとして、イスラム教徒が強く反発している問題で、アメリカに抗議するデモは12日、中東各地に広がり、エジプトのアメリカ大使館前では夜を徹して抗議活動が続いています。これにより、アメリカとイスラム世界との関係が悪化しています。
リビアでは11日、東部のベンガジにあるアメリカ領事館が武装集団に襲撃され、リビア駐在アメリカのスティーブンス大使を含む4人のアメリカ人が死亡しました。アメリカのクリントン国務長官は12日「重武装した民兵」による犯行と説明し、アメリカ同時多発テロと同じ9月11日に起きたことに言及して「4人を追悼する日になってしまった」と述べました。アメリカの職務中の大使が殺害されるのは1979年のアフガニスタン駐在大使の殺害以来だということです。
襲撃されたアメリカ領事館(写真:ロイター)
一方、エジプトの首都カイロにあるアメリカ大使館の前でも12日、数百人の市民が集まり、「オバマ大統領は謝罪すべきだ」などと叫び、アメリカ政府に抗議しました。デモ参加者は、「預言者ムハンマドが侮辱されて非常に悲しい。アメリカはわれわれイスラム教徒の気持ちを考えるべきだ」と訴えました。抗議活動は夜を徹して続いており、治安部隊が石を投げるデモ隊に対し、催涙ガスで応じるなど緊張が続いています。
カイロでの反米デモ
また、中東ではチュニジアやスーダン、それにモロッコなどにあるアメリカ大使館周辺で抗議デモが起きており、映像を巡る反発が収まる見通しは立っていません。チュニジアの首都チュニスのアメリカ大使館前で、12日、イスラム主義者ら数百人が抗議デモを行いました。門を突破し大使館に侵入しようとした参加者に対し、警官隊が催涙ガスを使用しました。AFP通信などによりますと、デモ隊は鎮圧前の数時間、抗議活動をしていました。当局は5人を逮捕、投石で警官2人が負傷したということです。
こうした中、アナリストらは「今後もアメリカとイスラム世界の間の障壁が引き続き高くなる」との懸念を示しています。