アメリカとロシアの関係について
ロシアのミサイル
アメリカ国務省は22日、東西冷戦終結の象徴とされる軍縮条約、CFE欧州通常戦力条約について、ロシアが2007年に履行を停止したことへの対抗措置として、ロシアに対する通常戦力データ公開や査察受け入れなどの条約履行を停止すると発表しました。オバマ政権は、ロシアとの一連の軍縮交渉が行き詰まっていることへの不満を行動で示しました。
ロシアは2007年12月、東欧でのアメリカのMDミサイル防衛計画をめぐる対立を背景にCFE条約の履行を停止しました。同条約は、NATO北大西洋条約機構と旧ワルシャワ条約機構の加盟国が1990年に調印し、通常兵器と地上兵力について両陣営の上限を設定しています。その角度から見れば、米ロ間の最も深刻な懸案は東欧でのアメリカのMD計画だといえます。アメリカ側は「欧州MDはイランからの攻撃を念頭に核ミサイルを撃ち落とすための防衛システムだ」としていますが、ロシア側は猛反発しています。ロシアのメドベージェフ大統領は23日、MDシステムについて「我々の懸念を考慮しようとしていない」と強く批 判する声明を発表しました。ロシアはMD構築で自国の核抑止力が低下すると懸念しています。米欧とのMDを巡る協議が進展しない場合、軍事的な対抗措置を取り、新START新戦略兵 器削減条約から脱退すると警告しました。改善してきた米欧との関係に亀裂が生じる恐れも出てきました。メドベージェフ大統領は国営テレビで声明を読み上げ、欧州MDへの対抗措置として、北西部のカリーニングラード州のレーダー基地の早期 稼働、自国の戦略核の防衛強化、MDを突破できる攻撃兵器の採用、欧州MDを標的にできる新型ミサイルシステム「イスカンデル」のカリーニン グラードや西部、南部への配備などを挙げました。さらに米欧とのMD協議が打開しない場合「軍縮のさらなる進展を拒否する権利を持つ」と強調しました。
国際世論は「米ロ両側の強固な姿勢により、現在の行き詰まりが打開できない」とした上で、「冷戦が再発するかどうかは予断できない」との懸念を示しています。
ホー・ディエプ