アメリカの予算不成立について

アメリカの予算は、議会の上院と下院の双方で可決されることが成立の条件ですが、10月から始まる新年度予算は、上院で多数を占める与党・民主党と、下院で多数を占める野党・共和党が対立し、成立していません。


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9月30日は、与党が多数の上院が本会議を再開して、野党が多数の下院から送られたオバマ政権が推進する医療保険制度改革の延期を条件にした暫定予算案を採決し、政権に打撃を与えるとして否決しました。これを受けて、下院は内容を一部修正した暫定予算案を9月30日夜に改めて可決して上院に送りましたが、上院は再び否決し、与野党は調整を続けているものの大幅な歩み寄りを拒否しています。

このため、アメリカ政府は10月1日になっても行政運営に必要な予算が整わず、およそ18年ぶりに政府機関の一部が閉鎖される事態が避けられませんでした。

さらに数十万人の政府職員が無期限で自宅待機となり、退役軍人などに対する行政サービスに支障が出ることが予想され、国民生活や経済に深刻な影響を及ぼすとしています。政府機関の一部が実際に閉鎖されても、国防や治安、医療など国の安全や国民の健康に直結する業務は継続されます。

また、NASA=アメリカ航空宇宙局は閉鎖されるものの、管制センターは宇宙ステーションで任務を行う宇宙飛行士を支援するため、業務を続けるとしています。

アメリカは国民皆保険制度を採用しておらず、多くの国民は民間の医療保険に加入します。このため、治療を満足に受けられない無保険者が約5000万人に達し、社会問題となっています。しかし、野党共和党は財政負担が増大すると厳しく批判しており、オバマケアの骨抜きを狙っています。

オバマ大統領は1日、ホワイトハウスにこの改革で恩恵を受ける人たちを集めて記者会見し、「医療保険制度改革は去年の大統領選挙でも主要な争点となったが、もう決着済みだ」と述べ、必要性を訴えました。

そのうえで、「政府機関の再開に条件を付けようという考えは全く意味がない」と述べ、野党側の要求には応じない姿勢を強調し、条件を付けずに予算案を通し、閉鎖されている政府機関を再開させるよう求めました。

アメリカでは、連邦政府の債務の上限が法令で定められており、債務残高は約16兆7000億ドル(約1640兆円)の上限にほぼ達しており、ルー財務長官は17日までに議会が上限を引き上げないと、政府の手元資金が底を突くと警告しています。

債務上限が上がらなければ、アメリカはこれ以上の国債発行ができなくなります。アメリカ政府の資金繰りが行き詰まるうえ、発行済みのアメリカ国債の利払いが滞る恐れがあります。金融市場で最も信用力が高いアメリカ国債の信頼が損なわれれば、市場混乱や世界的な金融危機を招きかねなません。議会に残された時間は2週間あまりとなります。

2011年に与野党が債務上限問題でぶつかったときは、株価の急落や米国債の格下げに危機感を覚えた与野党がギリギリのタイミングで合意に至りました。ただ今回はオバマ政権の最重要政策である医療保険改革法が争点となっています。2014年秋に中間選挙を控え、オバマ氏は「修正には応じない」としており、妥協点を探るのが難しいということです。

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