
20日から、アメリカのオバマ大統領はイスラエル、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区、ヨルダン歴訪に出発します。2期目就任後、初めての外国訪問にイスラエルを選んだことは「中東問題はオバマ大統領に対し、一定の影響力を持つ」とみられます。
訪問期間中、オバマ大統領はイスラエルのネタニヤフ首相と会談するほか、国会ではなく、エルサレム市内のホールで演説を行うようです。オバマ大統領は、21 日に西岸のラーマッラーを訪問してアッバース大統領と会談する予定です。
アメリカの大統領としては、ブッシュ前大統領が2008 年1 月に初めてラーマッラーを訪問しています。22 日にベツレヘムの生誕教会を訪問しますが、ブッシュ前大統領同様に、旧東エルサレム市内の嘆きの壁は訪問しないようです。
オバマ、ネタニヤフ両首脳は個人的確執が伝えられ、両国関係は冷却化しています。オバマ大統領が2010年9月、パレスチナとの和平交渉を仲介した際、イスラエルが入植活動停止の延長に応じずに交渉プロセスが頓挫したことなどが背景にあります。
アメリカ大統領のカーニー報道官は「大統領の2期目の始まりとイスラエル新内閣の発足は、両国の絆を確認する良い機会だ」と述べ、アメリカ・イスラエル双方の政権が刷新される機会を捉えて関係を再構築したい考えを強調しました。
イランの核問題を巡っては、武力行使の可能性を示唆するイスラエルに対し、アメリカは当面、外交的解決を追求する姿勢を明示しています。オバマ、ネタニヤフ両首脳は会談で、国連安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランとの協議をにらみながら対処方針を擦り合わせるとみられます。
オバマ大統領は中東訪問を前に、イラン政府に対して「今こそ核問題の解決に向けて、直ちに意味のある行動を取る時だ」と呼びかけました。また、オバマ大統領は、経済制裁と外交による対話での解決を訴え、平和利用が目的なら現実的な解決方法があると強調しました。
オバマ大統領は、2期目の外交の重要課題であるイラン核問題のほか、頓挫しているパレスチナ和平交渉を協議するとみられます。ただ、イラン外交交渉にどれだけの時間をかけるか、軍事行動に発展する恐れのある「一線」をどう定めるかなど、まだ合意に至っていないと指摘されました。
そのほか、西岸地区へのイスラエルの入植をめぐっても、長年ぎくしゃくしています。パレスチナ解放機構のシニアメンバーは「アメリカが公平な和平調停者となるなら、我々はオバマ大統領の訪問を歓迎する」とコメントしましたが、カーニー報道官はマスコミへの説明会で、「大統領は和平交渉について特別に提案する予定はない」と述べました。
オバマ大統領は、今回は旅行者としてイスラエルを訪問するとしました。イスラエルを訪問したオバマ大統領が、聞き役に徹する場合、その意味は、中東和平というゲームのボールはイスラエル側にあり、イスラエルが何もしなければ何も動かず、アメリカも動かないということです。そして、それはイスラエルの責任であり、アメリカの責任ではないとの無言の圧力になることでしょう。