アメリカ大統領選挙は現地時間8日、全国50州と首都ワシントンで投開票が行われます。第45代にして初の女性大統領を目指す民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官と、不動産王の共和党候補ドナルド・トランプ氏が激しく争っており、勝敗は現在14ある接戦州次第という情勢です。
全国に先駆けて投票するサンディエゴの有権者(写真:ロイター)
今回はアメリカ政界の最も劇的選挙と見られています。というのは両候補は政策と立場が対立しているからです。また、クリントン氏が私用メール問題をめぐりアメリカ連邦捜査局と対立している一方、トランプ氏が女性に迫った経験を吹聴したり、12人前後の女性からわいせつ行為を非難されたりしてきました。
クリントンとトランプ、色の不調和
実際、投票日が迫っているこの数日、クリントン氏のトランプ氏に対するリードが縮小しています。このため、現時点まで、圧倒的優勢を示す候補はいないといえます。アメリカ国務長官を歴任したクリントン氏は、経済政策のほとんどがオバマ政権が歩んできた道を忠実に引き継ぐでしょう。
クリントン氏の掲げる計画には、富裕層に対する増税、連邦最低賃金の引き上げ、地方大学による貧困層向けの教育無償提供、オバマケアの改革、同盟国との関係の強化、新しい外交関係の構築などが含まれています。
一方、トランプ氏の経済計画は規制緩和を通じて経済活動を復活させようとするものです。今年のアメリカの経済成長率を引き上げると約束しており、その手段として連邦法人税率を15%に引き下げることや、富裕層の所得税減税を掲げています。
(写真:ロイター)
また、カナダやメキシコとのNAFTA=北米自由貿易協定の再交渉も要請し、TPP=環太平洋パートナーシップ協定から「離脱する」とも表明しました。両候補の政策と立場が対立していることは今回の選挙の激戦に繋がっています。
得票のための努力
現時点まで、アメリカのおよそ4000万人の有権者は全国に先駆けて投票を行いましたが、その開票結果によりますと、両候補間の差はわずかです。このため、選挙人の94票が集まるフロリダ州や、オハイオ州、ネブラスカ州などでの投票結果は選挙全体に大きな影響を与えると予測されています。
7日公表されたロイター・イプソスの週間世論調査によりますと、クリントン氏は引き続き優勢となっています。6日まで実施されたこの週間調査に基づく予想では、大統領選でクリントン氏の選挙人獲得数は303人となり、当選に必要な270人を大きく上回る見通しです。
(写真:ロイター)
一方、共和党候補のドナルド・トランプ氏の獲得数は235人と予想されています。フロリダ、ミシガン、ノースカロライナ、オハイオの各州で両候補への支持が拮抗し、ペンシルバニア州ではクリントン氏のリードがわずか3ポイントでした。トランプ氏が予想をくつがえして、大統領選で勝利するには、これら激戦州の大半を制する必要があるとみられます。
アナリストらは、「現時点まで、両候補ともチャンスがあることから、投票結果が出ない限り、予断できない」との見方を示しています。