イスラエル軍は5日未明、シリアの首都ダマスカス近郊にある軍施設3か所を空爆しました。イスラエル軍は数日前にもシリア領内で、ヒズボラへのミサイル輸送を阻止するための空爆を実施しました。イスラエルは5日の攻撃を予定していませんでしたが、内戦に伴う周辺地域の不安定化を防ぐため、空爆作戦を強化しているということです。

イスラエルの空爆を受けたダマスカスの研究所 (写真:Kienthuc.net.vn)
イスラエル軍によるシリア国内攻撃はこの3日間で2度目となり、今回の空爆でシリア紛争が周辺国にも飛び火しかねないという新たな懸念が持ち上がりました。シリア外務省は国連安全保障理事会に書簡を送り、同国政府が武器を輸送しているとの主張は「事実無根」と訴え、イスラエルは「テロリスト集団」と結託していると非難しました。さらに、空爆によって死傷者が出た上、施設と周辺の民間人居住地域にも深刻な被害があったとしています。シリア政府は緊急閣議を招集した後に、「イスラエルの攻撃によって、あらゆる可能性への扉が大きく開かれた」と警告する声明を発表しました。「この攻撃によって、複雑な地域情勢がさらに危険な状況になったことを、国際社会は知るべき」と述べ、イスラエルによる攻撃を非難した上で、報復攻撃も辞さない考えを示唆しました。

写真:AFP
こうした中、ロシア外務省のルカシェビッチ情報局長は6日、声明を出し、「イスラエルが3日と5日にダマスカス近郊の施設を空爆したとする極めて憂慮すべき情報に関し、あらゆる状況を確認、分析している」と述べました。その上で「さらなる軍事衝突に発展すれば、シリアだけでなくレバノンにも緊張をもたらしたり、比較的安定しているレバノンとイスラエルの国境を不安定化させたりするリスクが急激に高まる」と警鐘を鳴らしました。
一方、NATO=北大西洋条約機構のラスムセン事務総長は、内戦が続くシリアで化学兵器が使われた疑惑が強まっていることや、イスラエルによる空爆が伝えられていることについて強い懸念を表明し、国連の安全保障理事会に対して政治的な解決に向けて結束した対応を打ち 出すよう強く求めました。
イスラエルは、化学兵器を含むシリアの武器が、ヒズボラの手に渡ることを強く警戒し、防止策を講じることを重ねて警告してきました。
7万人以上の死者を出したシリア内戦で、ヒズボラはアサド政権側を支援して実戦参加しており、シリア軍の武器がヒズボラの手に渡る可能性は日々拡大しています。