10月2日、イタリアのレッタ内閣の信任を問う投票が上下両院で行われ、レッタ首相との対決姿勢を強めていたベルルスコーニ元首相がみずから率いる政党の中から造反者が多く出たことを受けて一転して信任に回り、政治の混乱は回避されました。しかし、レッタ内閣が当面解決すべき問題は山積しており、今後どのような措置が取られるかが焦点となっています。
レッタ首相とベルルスコーニ元首相(写真:Kienthuc.net.vn)
政治混乱回避
イタリアでは、多額の負債を抱える国家財政の立て直しを進めるため、レッタ首相が内閣の信任を問う投票を呼びかけました。
議会第2勢力の中道右派政党「自由国民」を率いるベルルスコーニ元首相はこれまでレッタ首相の財政再建策は受け入れられないとして対決姿勢を強め、9月28日に連立政権からの離脱も表明したため、ここ数日は連立政権が崩れるという見通しが強まっていました。
しかし、党内からそうした対決姿勢に疑問を感じて造反する議員が相次ぎ、これを受けてベルルスコーニ元首相は投票の直前、一転して信任に回ると表明しました。これにより、「自由国民」の議員の大半がレッタ首相に信任票を投じ、その結果、上院、下院のいずれも信任の票が不信任を大きく上回りました。
内閣が信任されたのを受け、レッタ首相は「政権への脅しはもう十分だ。もうどんな事態でも崩壊はしない」と語りました。
国際社会の反応
イタリア上院がレッタ政権を信任したことを受け、EU=欧州連合のバローゾ欧州委員長は2日、歓迎する声明を発表し、そのなかで、「投資家の信用を失わせるような人工 的な政治危機は避けることが極めて重要だ」として、自らの政治的延命のため危機をつくり出したベルルスコーニ元首相を批判しました。
今回の危機は沈静化した欧州債務危機が再燃する恐れも生じさせました。バローゾ氏は「レッタ政権への信任がイタリアだけでなくEU全体にとって重要な意味を持つ」と強調し、「政治的安定がイタリアには不可欠だ」と訴えました。
アナリストらは、「ベルルスコーニ元首相が信任に回ったのは、党の分裂を避けるためだったが、みずからは脱税の罪で有罪判決が確定していて、近く議員資格の剥奪を巡って上院で審議が行われることになっており、さらなる求心力の低下は避けられない見通しだ」と分析しています。