イタリアでは先月議会選挙が開催されましたが、議会で第1の勢力となった民主党が上院の議席の過半数を確保できなかったことから、新しい政権が発足する見通しが立っていません。この問題は同国の政局混乱だけでなく、ユーロ圏諸国にもマイナス影響を与えると懸念されています。
イタリアでは、先月行われた議会選挙で、財政再建路線を継続するという民主党のベルサーニ書記長が率いる中道左派連合が上下両院で第1勢力となりましたが、上院で過半数を確保できなかったことから、ほかの勢力と協力しなければ、新しい政権を発足できない状況に陥っています。
こうしたなか、ベルサーニ書記長は6日、上院で第2の勢力となったベルルスコーニ前首相の中道右派連合との協力はありえないとして、連立の可能性を明確に否定しました。その一方で、第3の勢力となった新党「五つ星運動」に対しては連携を模索する姿勢を示し、その主張を一部取り込んだ新たな政策方針を明らかにしました。
しかし、「五つ星運動」を率いるグリッロ氏は慎重な姿勢を示しており、本格的な連携は難しいものとみられています。
このような中、欧州でイタリア総選挙後の政治混迷に対する懸念が高まっています。財政健全化が道半ばのイタリアの混迷が深まれば、債務危機の根本解決に向けた欧州のシナリオにも影響を及ぼしかねないとの予測も出ています。
危機再燃を最も警戒するとされる国はスペインです。危機では財政不安の国の情勢が不安定化するたびに他の南欧諸国で国債金利が上昇するなどの連鎖反応が起きました。昨年、国債金利の高騰に悩まされたスペインは「欧州の将来に悪い前兆だ」と懸念しています。
ECB=欧州中央銀行が昨年、危機国の国債買い支え策を決め、危機は一時的に遠のきました。欧州はこの間に財政を立て直し経済成長を図るシナリオを作っています。だが、景気後退は予想以上に深刻で、緊縮財政への国民の不満も強いです。
アナリストらは「その背景の中、イタリアの政局混乱は状況をさらに悪化させる」と指摘した上で、「その膠着が続き、欧州諸国は不安を拭えない」と分析しています。