イランのアハマディネジャド大統領はエジプトの首都カイロで6日から7日の日程で開かれているOIC=イスラム協力機構首脳会議に出席するため、エジプトを訪問しています。イラン大統領の訪問は1979年のイラン革命後の国交断絶以来、初めてで、関係改善で国際的な孤立から脱したいイランと、イスラム圏で存在感を高めるエジプトの思惑が背景にあります。
6日にカイロで、エジプト・イラン首脳会談が行われました。国営イラン通信は「両国首脳は2国間の問題について話し合う」と伝えました。会談後の記者会見で、アハマディネジャド大統領は「エジプトとイランは歴史的に結びつきが強い。今回の訪問が2国間の新たな始まりとなるよう願っている」と友好姿勢を示しました。
また、地元の新聞に対し、「大規模な融資枠を提供する」と表明し、経済混乱に直面するエジプトを支援する意向を示しました。これは、30年以上も断交が続いてきた両国の関係改善を目指すものとみられます。ともに中東の大国であるイランとエジプトの両首脳が関係改善に動くのはそれぞれ思惑を抱えています。
イラン側は、核開発疑惑で欧米との対立を深め、原油禁輸や金融資産の凍結といった経済制裁に直面しています。さらにペルシャ湾岸諸国の反体制派を支援していると非難するサウジアラビアとの関係が悪化しています。シリア内戦でも湾岸諸国とは違ってアサド政権を支援しています。国際社会からの孤立を回避するため、エジプトに目を付けたと評されています。
一方、エジプトには、イランと関係を保つことで、アラブの春以降は薄れがちな存在感を高める思惑があります。昨年8月にはモルシ大統領がイランを訪問するなど、関係改善の兆しが見え始めていました。ムバラク政権が崩壊して以降、モルシ大統領は全方位外交を取ってきました。イランともあえて関係を構築することで、中東地域に積極関与する姿勢を示しています。
しかし、イスラム教シーア派のイランに対して、エジプトではスンニ派が主流を占めるなど、両国の急速な関係改善には障害物もあると指摘されています。だが、両大国の接近にはアメリカや、イスラエルが早くも神経をとがらせています。欧米の対イラン制裁や、イスラエルとの平和条約に影響が及び、中東地域のパワーバランスに変化をもたらしかねないからです。