核開発疑惑で欧米諸国から経済制裁を受けているイランでは、14日に新大統領を決める選挙が行われます。保守派からはジャリリ候補のほか、テヘラン市長のガリバフ候補と元外相のベラヤチ候補が有力ですが、今週、唯一の改革派だったアレフ候補が撤退したことで、保守穏健派のロウハニ候補に改革派が合流し、勢いが出てきています。
候補者(写真:ILNA)
経済政策を巡るこれまでの論戦は低調ですが、国民にとっての最重要課題は、制裁で疲弊した経済の立て直しと見られています。しかし、選挙では、経済制裁の原因となった「核開発」を続ける立場の保守派のジャリリ氏や、ガリバフテヘラン市長らの当選が有力視されていて、早期の制裁解除は望めない状況となっています。
一方、欧米との関係改善を目指す「改革派」に近い候補も出馬していますが、選挙への市民の関心は低いのが現状です。ジャリリ氏は「石油依存度を下げる」という目標を、そして、ベラヤチ元外相は「100日以内に物価上昇率を抑制」などの目標を掲げていますが、裏付けは乏しいです。
米欧の経済制裁で外貨獲得の柱の原油輸出は滞り、通貨リアルは暴落しました。物価上昇率は公式発表で、30%を超え、失業率も高止まりしています。米欧との核協議の進展なしには、苦境を招いている制裁の解除も望めません。
2009年の前回大統領選は、改革派のムサビ元首相が都市部を中心に経済政策に不満を持つ若年層に浸透しました。保守強硬派のアハマディネジャド大統領を猛追し、高い関心を集めました。しかし、今回の有力候補は、イランの最高指導者であるハメネイ師に忠実な保守強硬派ばかりです。
欧米との対話を志向し、改革派も支持を表明したラフサンジャニ師は、ハメネイ師の影響力が強い護憲評議会の事前審査でふるい落とされました。対外関係や経済の行き詰まり打開を望む票の受け皿は限られると評されています。
新大統領が決まっても、これまでと同様に、最高指導者・ハメネイ師が重要事項を決定するため、政策に大きな変更はないとみられています。