国際世論は「エジプトの大統領選挙が同国に政治安定を取り戻す」との期待感を置きましたが、この選挙の決選投票の後、エジプトは新しい危機に直面しています。これは新しい権力争いの始まりとみられています。これにより、エジプト国民が平穏な日々を送れるようになるまでの道のりはもっと遠くなると予想されています。
エジプト大統領選の投票
エジプト大統領選の決選投票で対決したイスラム団体「ムスリム同胞団」系政党「自由公正党」のムハンマド・ムルシ党首とアフマド・シャフィーク元首相は19日までに、ともに勝利を宣言しました。こうした中、選挙管理委員会は、いずれも勝利を宣言した双方の陣営から出された異議を審査する時間が必要だとして、21日に予定していた開票結果の発表を延期しました。
それに加えて、軍最高評議会が権限強化を発表したことで、エジプト内政の混乱が深刻化しています。軍の最高評議会が新大統領の誕生後も軍の指揮権や立法権、憲法案に対する拒否権を軍が持ち続ける方針を示しました。実権を握る軍政側が約束していた6月中の「民政への完全移管」が不可能となり、軍が権力を持ち続けることに対し、反発するデモが続発しています。大統領選挙を制し、勢いを増すイスラム原理主義勢力は軍に対する批判を強めています。
デモ
17日の大統領選挙の決選投票で勝利をほぼ確実にしたイスラム原理主義系政党のモルシ党首は「軍による独裁の再来」などと批判を強めています。19日夜にはカイロ中心部の広場で原理主義勢力の支持者や2011年の反体制運動を支持した若者など数万人が抗議デモを実施しました。原理主義側は軍政に反発するデモを今後も呼びかける方針で、軍政側との対立が深まっています。
内政の先行きを不安視し、経済面にも影響が及んでいます。代表的な株価指数「EGX30」は急落しています。通貨=エジプト・ポンドもドルに対して下落するなど、経済面への影響も広がってきました。今後もデモが続発するようだと、外国人観光客の足が遠のきかねず、主要産業である観光業がさらに低迷する可能性もあります。