エジプトでは権力争いが激化しています。同国のモルシ大統領はその闘争における均衡を崩し、民主化への移行が行き詰まる危険性が増しています。大統領は軍のトップを解任し、軍人に奪われた権力を徐々に取り戻そうとしています。同国の政情の行方が予断できない状態です。

アナリストらによりますと、民主主義の勝利は一時的なものにとどまっています。ほかの軍関係者から支持を得る見返りに、モルシ大統領が交わした取引には多くの疑問が浮上しています。エジプト大統領は司法命令で解散した議会の権限も引き継ぎ、かつてない権力を手にするということです。

大統領は自身の目的が独裁国家の建設ではないということを大衆に納得させる必要があります。ムバラク前政権が崩壊して以来、先行き不透明感が広がり、エジプト経済社会は停滞しています。失業率が上昇し、経済が低迷するなか、大統領の支持基盤であるイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」と軍部は権力闘争に明(あ)け暮(く)れ、ともに信用を失っています。

イスラム政権への権限委譲を阻止しようとする人々を退任させれば、両者とも国民の信頼を回復できる可能性がありますが、それはエジプトが直面している経済、社会、安全保障上の難題に今立ち向かう場合に限られます。一方、イスラムの資質を問う厳格なイスラム主義者に出し抜かれるのではないかと、ムスリム同胞団は神経をとがらせています。

エジプトが必要とする政府は、その統治に自信を持ち、エジプト国民すべての運命をより良いものとすることに重点を置くものです。モルシ大統領は軍に自身の権限を知らしめる第一歩を踏み出しました。次はできるだけ早く総選挙を実施し、自らの政権の民主的な資質を示さなければなりません。さらに新憲法を起草する委員会を選出すべきです。

現在の委員会には疑問があるからです。今後の体制に関する発言権を人々に与えることが、 エジプト新政権が信頼を得るための最善の方法だと評されています。