エジプトの新たな危機

反モルシ政権デモが拡大したエジプトで、軍隊は反政権派や宗教界の支持を得て、事実上 のクーデターを行いました。3日夜、エジプトの軍最高評議会のシシ議長は、国営テレビを通じ、憲法を停止して 暫定政府を樹立すると宣言しました。モルシ大統領の権限を剥奪し、最高憲法裁判所のマンスール長官に移すということです。

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エジプト軍がカイロで戦車を展開(写真:VOV/AP)

現地メディアなどによりますと、軍がモルシ氏の身柄を拘束しました。2011年2月に「アラブの春」で、ムバラク独裁政権が崩壊した後に、民主的な選挙によって誕生したイスラム政権はわずか一年で倒れました。これによりエジプトが新たな危機に陥るとの懸念が出ています。

軍の行動に関して、モルシ政権を支えた穏健派イスラム原理主義組織ムスリム同胞団は「正統性に対する陰謀だ」と猛反発しています。一方、治安当局から海外渡航を禁止されていたモルシ氏はフェイスブックで「軍の声明を拒否する。私は大統領で、これは軍のクーデターだ」と主張しています。

3日夜以降、大統領支持派が反対派や治安部隊と衝突し、国内各地で少なくとも14人が死亡しました。治安当局は、同胞団を母体とする与党「自由公正党」の党首を逮捕し、さらに騒乱をあおったとして同胞団員300人の逮捕状を出しました。政情不安が続く可能性は強いと予測されています。

軍が発表した民主化プロセスの行程表によりますと、モルシ政権下で制定された現行の憲法は停止し、マンスール長官が暫定大統領に就任します。実務者で構成する政府を発足させ、憲法の修正作業を担う委員会を設置します。

大統領選挙や議会選挙を早期に実施して、本格政権の発足を目指します。選挙などの日程は暫定政府が決めます。シシ議長は「モルシ氏は人々の求めにこたえなかった。軍は人々の要請を見て見ぬふりができなかった」と語り、政治介入を正当化しました。マンスール長官は4日にも宣誓しました。

こうした中、国際世論は深い懸念を示しています。アメリカのオバマ大統領は3日、声明を出し、民主的に選ばれたモルシ大統領が軍によって権限を剥奪されたことに「深刻な懸念」を表明したうえで、早期の民政移管を要求しました。アナリストらは「エジプロの新たな危機は長引く」と予測し、「アラブの春」を疑問視しています。

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