エジプト情勢

エジプトのモルシ大統領は22日、大統領の決定を裁判所が(くつがえ)すことはできないなどとする条項を含む憲法宣言を発表し、大統領の権限の大幅な強化に乗り出しました。

モルシ大統領は23日、「エジプトのためにした決断だ」と改正の意義を訴えました。 追加された規定はほかに、新憲法の起草期限を2カ月延長して来年2月に変更し、司法が起草委員会を解散 させることはできないと定めました。また、民主化闘争時のデモ隊殺害などで罪に問われた前政権高官のやり直し裁判も盛り込みました。終身刑を 言い渡されたムバラク前大統領も再審対象とみられます。2011年1月に起きた反体制派殺害に関与した旧政権幹部の責任追及を再開することも盛り込まれています。

世論はとりわけ、新憲法に関する決定に反発していました。新憲法は起草委員会が草案を策定中でしたが、モルシ大統領の出身母体であるムスリム同胞団などイスラム勢力が過半数を占め、イスラム教の位置づけを巡る意見対立などから、委員の脱退が相次いでいます。また、起草委員メンバーは、先に司法判断で解散された人民議会が選出しており、裁判で正当性が争われている最中でした。大統領がイスラム系主導の新憲法の起草を「保護」したものと映っています。

また、野党党首のエルバラダイ前国際原子力機関事務局長はネット上で「モルシ大統領はすべての国家権力を奪い、新たな『ファラオ』(古代エジプト王)と化した」と非難しました。

エジプト情勢 - ảnh 1

これに対し、世俗派のグループなどが23日のイスラム教の金曜礼拝後に、大統領に抗議するデモをカイロのタハリール広場で行うよう呼びかけたところ、数万人が集まりました。
国営メディアによりますと、広場の近くでは、デモ隊と治安部隊の間で衝突が起きているほか、各地で大統領の出身母体のイスラム組織の政党の事務所が放火されるなどして、多数のけが人が出ているということです。

国内情勢の不安が日増しに高まっている中、29日夜、モルシ大統領は国営テレビとのインタビューで「裁判官には政治に介入する権利はない」と述べ、憲法宣言を撤回する考えがないことを改めて示しました。そのうえで、「新しい憲法や議会ができるまでの暫定的な措置だ」として国民に理解を求めました。
新しい憲法については憲法制定委員会が草案づくりを進めてきましたが、29日までにほぼまとまり、その賛否を問う国民投票が近く行われる見通しです。エジプトにおける現在の危機を打開する唯一の措置は新憲法を早期に完成することであると言われています。しかし、これは容易なことではなく、また、エジプト人は、同国憲法を遵守する強固な政権を期待しています。

ご感想

他の情報