(写真:ロイター)
20日投開票のギリシャ議会の総選挙で、チプラス前首相の与党・急進左派連合が大勝しました。これは予想を超える結果で、揺らいだ政権基盤を立て直すために解散・総選挙に打って出たチプラス前首相に、より有利な地位を与えています。しかし、財政改革と経済の停滞や、難民・移民の流入問題など山積する課題への対処が急務となっています。
選挙は事実上、緊縮策の「拒否」から「受け入れ」に転じたチプラス氏に対する国民投票となりました。内務省集計発表によると、急進左派連合は得票率35.46%で、 145議席を獲得し、第1党を維持できました。単独過半数には届きませんでしたが、選挙前の124議席から党勢を拡大しました。
賢明な解散・総選挙
チプラス氏は1月の総選挙で「緊縮策の放棄」を公約に掲げましたが、7月に受け入れに転じ、反緊縮を掲げる与党内強硬派の造反・離党を招きました。チプラス氏は与党内で新たな支援策の内容をめぐり対立が見られたことを受け、国民の真意を問うために解散総選挙を実施することにしました。若者の支持離れが指摘されましたが、政治腐敗の払拭を訴えて中道左派層にも食い込み、選挙戦終盤で勢いを回復しました。
世論調査の結果を超える票数を獲得し、連立相手は1党のみで済むことから、より自由な政策運営が可能になると見られます。政治アナリストは今回の選挙結果について、「チプラス氏は個人的に大きな勝利を収めた。同氏はかつてない政治的な主導権を手にした」と指摘しました。
課題は山積
しかし、数多くの難問が新政権を待ち受けます。今後の焦点はチプラス氏が選挙戦でも掲げたギリシャの債務減免の交渉です。10月には金融支援に伴う次回の融資実行の可否の判断のため、EU=欧州連合などによる緊縮策の履行状況の審査が迫ります。 銀行の資本規制の影響などにより経済はマイナス成長に落ち込むのは必至で、さらに債務の返済負担が重くなる可能性があります。EU欧州連合や市場は、債務減免の大前提として、新政権が進める改革の本気度を見極めようとしています。
これに加え、トルコ経由で流入する移民らへの対応も待ったなしの状況です。財政難の影響もあり、押し寄せる難民らへの対応は後手に回り、国民に不安が広がっています。中東欧で移民らが滞留しているのは、ギリシャが機動的に対処できていないことも一因です。受け入れ施設の不足など体制の不備が指摘されています。
今回の総選挙で、チプラス氏が強い指導力を発揮できる立場を獲得したとの意見が多くの政治アナリスから出されています。これは新政権の基盤を強くするものですが、難問が山積している中、チプラス氏がギリシャを財政危機から安全な状態に導くことができるかどうかは不透明です。