
米軍基地周辺の抗議デモ(写真:xinhuanet.com)
コーラン聖典の焼却をめぐる問題
アフガニスタンの首都カブール北方にあるバグラム アメリカ空軍基地周辺で21日、同基地に所属するNATO北大西洋条約機構主導のISAF国際治安支援部隊の兵士らがイスラム教の聖典コーランを燃やしたとの情報に激怒した地元住民が抗議デモを行い、2000人以上が集まりました。カブール市内でも数百人が抗議デモを行い、治安部隊が増援部隊を派遣して事態の収拾を図りました。ISAFのジョン・アレン司令官は21日、「コーランを含む大量のイスラム教関連書籍を焼却したという」兵士の不適切行為に関する情報について謝罪するとともに、調査を命じたことを明らかにしました。
アメリカ兵によるコーラン聖典の焼却をきっかけに、アフガニスタンで混乱が続いていることを受けて、アメリカのオバマ大統領がアフガニスタン国民に謝罪したことに対し、アメリカ国内では、野党・共和党から「謝罪は必要なかった」との批判が相次いでおり、オバマ大統領は苦しい立場に立たされています。
大統領選挙の共和党候補者選びに立候補しているサントラム元上院議員が26日、アメリカABCテレビで「コーランの焼却は意図的に行われたものではない。謝罪は誤りだ」と述べました。ワシントンでは、アフガニスタンの国防相らが、アフガニスタンに駐留する国際部隊の撤退時期などをアメリカ側と協議する予定でしたが、抗議デモへの対応を理由に訪問が取りやめられるなど、事態収拾のめどは立っておらず、オバマ大統領は苦しい立場に立たされています。

この件についてアフガニスタン各地で激しい抗議行動が相次ぎ、フランス、ノルウェー、アメリカの軍事基地がデモ隊に襲われました。東部のナンガハル州にある軍の基地でアメリカ兵2人がアフガニスタン兵に殺害されるなど、発覚してからの3日間で各国の兵士や民間人に14人の死者が出ました。アフガニスタンの旧支配勢力タリバンは、外国の兵士を殺害するよう国民に呼びかけました。
アフガニスタンは非常に宗教的な国で、これまでにもイスラム教が少しでも冒瀆されたと受け止められると、暴力的な激しい抗議が起きてきました。
また、この事件をきっかけに混乱が続いている中、アメリカ軍の将校2人が銃で殺害されたことを受け、フランスとドイツの両政府が、アフガニスタンに派遣している職員を一時的に撤収させる方針を発表するなど、影響が広がっています。
今回の事件では、すでにアフガニスタンに駐留する国際部隊が、アフガニスタン政府の顧問を務めている将校や兵士を撤収させると発表しているほか、イギリス政府も職員の撤収を決めています。
アフガニスタン駐留アメリカ軍を巡っては、アメリカ海兵隊員4人が先月、タリバン戦闘員の遺体に放尿する場面を撮影した映像がインターネット上に流出する問題が起きたばかりです。アメリカ駐留軍の段階的撤収を進めるオバマ政権にとって現地治安情勢の安定は最重要課題で、アフガニスタン社会の反発を招く相次ぐ「失態」は頭痛の種となっています。