シリア情勢は緊張が増しています。アサド政権の閣僚らが死亡した爆弾テロを受け、アサド政権側が報復に出るなど反体制派との激しい戦闘が続き、事態は悪化しています。
シリアの首都ダマスカスにある国家安全省で18日、ラジハ国防相ら3人が死亡する爆弾テロが起きました。反体制派武装グループ「自由シリア軍」などが犯行声明を出したため、アサド政権側は報復を宣言し、軍を展開し、反体制派を攻撃しています。一方、アルアラビアテレビは、反体制派が空港と市内とを結ぶ道路を遮断し、空港を襲撃していると伝えるなど衝突は激化しています。
こうした中、国際世論は深い懸念を示しています。ヨルダンのアブドラ国王は18日、CNNテレビのインタビューで、「全面的な内戦のレベルに到達しつつある」との認識を示し、最悪のシナリオはアサド政権が保有する化学兵器が国際テロ組織アルカイダの手に渡ることだと指摘しました。さらに、「シリアの内政はイラクや中東地域の他の国より複雑であり、全面的な内戦に突入したら後戻りできない」と分析し、「この状況を唯一解決できるのはアサド大統領と政権だ」と述べました。
一方、アメリカのカーニー大統領報道官は「本日の出来事で、アサド政権が統制力を失っていることは明らかだ」と述べた上で、政権移行の実現に向けて国際社会が早急に一体となる必要があると強調しました。
他方、国連安全保障理事会は、20日に期限を迎えるシリア停戦監視団の活動期限を延長する決議案の採決を19日に延期しました。決議案にアサド政権への制裁措置を盛り込むことに対しロシアが強く反発しているためで、制裁をめぐる欧米各国とロシアの対立は深刻なままです。
こうしたなか、アメリカのオバマ大統領とロシアのプーチン大統領は18日、電話会談を行いました。政権移行の早期実現に両国の協力が不可欠である点では一致したものの、溝は埋まりませんでした。
国際世論は「現状から見れば、アサド政権は運命朝夕に迫っているといえる」との見方を示しています。