すでにお伝えしましたように、アメリカとロシアがシリア内戦の解決を目指して提案したシリア和平会議は今月中にスイスのジュネーブで開かれる予定です。これはシリアに平和を取り戻すチャンスと見られますが、現在の状況から見れば、この会議は成功しにくいと予測されています。
シリアでの戦闘(写真:VOV/AFP)
その予測を証明する様々な根拠があります。まず、シリアのアサド政権と反体制派間の思惑の隔たりです。シリア政府と反体制派の双方は26日、原則として出席する意向を表明しましたが、反体制派主要組織「シリア国民連合」は29日、声明を発表し、和平会議について、アサド大統領の退陣が前提になるとの考えを改めて強調しました。
一方、シリアのムアレム外相は同日、レバノンのテレビ局に、アサド大統領が少なくとも2014年の大統領選挙までは留任する見通しを示しました。両者の思惑は隔たり、会議の開催は困難との見方も強まっています。
そのほか、関係各国の動向も複雑です。和平会議を巡り、アメリカ、ロシア、EU=欧州連合とアサド政権側の外交工作が活発化しています。アサド政権側が反体制派への攻撃を強める一方、アメリカとロシアの外相は27日、パリで詰めの協議を行い、「全力を傾ける」ことで合意しました。
こうした中、EUは同日、反体制派への限定的武器供給で合意し、「真剣に交渉しろというアサド政権へのシグナル」を発しました。ロシア側はEUのこの決定に反発しています。ロシアのラブロフ外相は29日、「シリアの政権移行を協議する国際会議の開催実現に深刻な障害をもたらしている」と批判し、会議への政権側の欠席を招く可能性を示唆しました。会議は6月10日開催案がありますが、反体制派の参加は明確でなく曲折も予想されます。
そのほか、フランスの姿勢も重要な要素と見られます。アメリカとロシアの外相とパリで27日会談したフランスのファビウス外相は、フランス独自の分析でアサド政権が化学兵器を使った疑いが強まっていることを示唆し、化学兵器使用は「状況を一変させる」と、アサド政権の暴走にクギを刺しました。
さらに、「アサド政権を全力で保護する」と言明したレバノンのシーア派組織ヒズボラも情勢を複雑化させる要素と見られます。ヒズボラの軍事力はレバノンの国軍を上回るとも指摘される一方、最近はアサド政権を支援するためシリア内戦への介入を強めており、懸念が深まっています。
以上指摘した要素から見れば、シリア和平会議が予定通りに開催されても、期待通りに成果を収めにくいといえます。