シリア問題に関するロ米の対立


ロシアは、内戦が続くシリアでアサド政権への軍事支援を強化しています。シリア領内で過激派組織「イスラム国」への軍事作戦を続けるアメリカをにらみ、地中海に面する海軍基地を置くシリアでの権益と影響力の維持を狙っているとみられます。

アメリカ当局者は16日、CNNに対し、「ロシア軍のヘリコプター4機がシリア西部ラタキアの空軍基地に到着した」と明らかにしました。4機は画像提供会社オールソース・アナリシス社がCNNに示した衛星写真でも確認できました。

ケリー国務長官は16日、ロシアのラブロフ外相と会談しました。両者の会談はこの1週間で3度目でした。会談で、ケリー長官は「ロシアのアサド政権に対する支援の継続が紛争の激化を招き、過激派と戦うという我々の共通の目的を揺るがす危険性をはっきりと」と述べました。


ロ米関係における新たな亀裂

ロシア国防省などによりますと、シリア西部ラタキアの空港には9月12日、世界最大の輸送機AN124型機2機が到着しました。「食料、衣料、寝台、ストーブ、調理台、給水タンク」など80トンを届けたと発表しました。飛行ルートは非公表でしたが、アメリカの新聞ニューヨーク・タイムズによりますと、イランとイラクの領空を通過したとしています。

一方、アメリカ民間調査機関ストラトフォーによりますと、ロシアはラタキアの空港を拠点化すべく、滑走路の拡張工事に着手しました。航空管制施設や兵舎なども既に整備したということです。

ロシアとシリアはソ連時代から密接な関係を維持し、現在もシリアはロシアにとって重要な友好国です。ロシアはCIS諸国外で自国の唯一の軍事基地をシリアのタルトス港に維持しています。また、戦車、航空機、対空防衛システム、最新鋭の弾道ミサイル等の兵器・武器をシリアに供与してきました。

アメリカのデービス国防総省報道部長は14日の記者会見で、ロシアがラタキアの飛行場周辺に人員などを送ったとして、「一種の前方作戦基地を設置する意図を示唆している」との見方を示しました。イスラム国掃討に向け「ロシアの貢献を歓迎する」とする一方で、ロシアがシリアのアサド政権を軍事的に支援し続ければ「既に不安定な地域情勢がさらに危険に陥る」と懸念を表明した。


シリア問題でロ米協力はありえない?

これまで、ロシアとアメリカはシリア問題に関して、不一致を示してきました。ロシアはシリア政府を支持し、武器を提供している一方、アメリカはシリアのアサド政権を排除する意向があります。

しかし、シリアの内戦が発生してから4年が経っていますが、今も、終結する兆しがありません。アメリカがアサド政権を転覆するために実施してきた計画は失敗したと言えます。シリア内戦が開始されてからこの4年、少なくとも24万人が死亡しています。

シリアから大勢の難民や移民がヨーロッパに押し寄せています。政治アナリストによりますと、シリアへのロシアの支援はイスラム国を敗北させるためのものではなく、アサド政権を保護し、中東地域におけるロシアの影響力を増加させることに寄与します。

その背景の中で、この地域におけるアメリカの影響力は弱くなっています。その理由で、今後、シリア問題に関して、ロシアとアメリカの協力はありえないと指摘されています。

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