
この10日間あまり、トルコでは、イスタンブール中心部の再開発計画をきっかけに、エルドアン政権に対する若者などによる抗議デモが各地に広がり、11日、デモ隊の集まるイスタンブール中心部の広場に警察が放水車や催涙ガスを使って突入してデモ隊と激しく衝突しました。広場にはその後、再び数万人の若者などが集まり、夜になって石などを投げ始めたデモ隊に対して警察は、催涙ガスや放水車を使って鎮圧を図り、衝突は夜通し散発的に続いています。
トルコで発生した、ここ数十年で最悪とも言われる一連の暴動の発端は、イスタンブールにある小さな公園の再開発計画でした。当初は再開発に反対する少数の環境保護者による小さなデモでしたが、やがてそれは強権的なエルドアン首相に対する抗議運動となり、全国へ広がっていきました。
現時点で、67の市と町にある280箇所のオフィスや店、及び数十台の警察の車輌が破壊され、経済的損失額は約4千万ドルにのぼりました。さらに、3人が死亡、5千人以上がけがをしました。

エルドアン首相
外遊から帰国したエルドアン首相はトルコ国民に対し「起こっている混乱が民主的現われとして見做されることは出来ない。」と懸命に説得してきました。
さらに、アルンチ副首相はデモ隊に対し「政府は混乱から教訓を得た」と明らかにするとともに、デモを早急に中止させるよう呼びかけました。しかし、デモの数は200回を越えたものの、中止の兆しを見せないままです。
これらのデモは、エルドアン首相政権に対する国民の、日増しに増大している失望を示しています。
2003年に就任したエルドアン首相は、穏健イスラム主義のAKP=与党・公正発展党による単独政権を率いて経済の立て直しに成功しました。この数年間、トルコは経済的にも政治的にも著しい発展を遂げてきたことは、否定できません。しかし、トルコ国内では、公正発展党の「イスラム化政策」は常に世俗派の不満を受けてきました。トルコ政府によるアルコール飲料の販売と消費の制限を強化する法案や、多数のジャーナリストやアーチスト、文学者の拘束などは国民の怒りを引き起こしました。彼らは「これらは保守な行為であり、個人的生活に反している」と指摘しました。
トルコでは2007年にも大規模な反AKPデモが起きましたが、この年の総選挙ではAKPが勝利しました。今回もAKP支持者が多い地方部への反政府機運の広がりは限定的とされ、次期選挙でのAKP優位は変わらないままです。デモ隊は「首相辞任まで声を上げ続ける」と意気込みますが、その先の目標は見いだせていません。
最後の任期に入ったエルドアン首相は、憲法改正や古くからのイスタンブールの町並みを一新する大規模プロジェクトに着手するなど、自らの功績を残そうと躍起でした。その一方で反対派は首相がメディアに圧力をかけたり、政教分離を定めた憲法に反してイスラム化を進めるなど、強権的な色彩を強めているとして批判しています。
アナリストによりますと、現時点で、トルコには3つの解決策があります。第一はエルドアン首相が辞職し、選挙を前倒しで行なうこと。第二は、エルドアン首相の政府が自制して、デモ参加者を拘束、弾圧せず、デモ参加者と対話を行なうこと。そして3つめは、国民の不満を緩和させる適切な措置を早急にとるということです。