世界のおよそ半分の原油産出量を占める主要産油国は17日、カタールの首都ドーハで原油の生産調整などをめぐる協議を行ないましたが、増産凍結で合意できませんでした。脆弱な合意さえも形成できなかったことで、産油国間における意見の相違と、利益追求に向けた行動能力の欠如を大いに露呈する形となりました。
原産国の対立 浮き彫り
会合後の記者会見で、ロシアのノバク・エネルギー相は、合意に至らなかったことはロシアにとって予想外だったと発言しました。2月に増産凍結で暫定合意したサウジアラビアとカタール、ベネズエラ、ロシアの当局者は今月16日に合意草案に同意しましたが、翌日の会合直前になって一部の国が翻り、会合では「激論」が交わされたということです。また同大臣は、生産凍結に合意できていたら6カ月前倒しで原油市場のバランスを取り戻せたかもしれないが、現状では来年半ばまでかかりそうだと述べました。
一方、カタールのサダ・エネルギー相は、「合意に至るにはもっと時間が必要だ。全てのOPEC加盟国の参加が増産凍結の合意への助けになるだろう」と述べ、イランの参加が必要との認識を示しました。
核問題に伴う経済制裁が1月に解除されたイランは、制裁前と同水準の日量400バレルを回復するまで増産を続け、凍結に応じる考えがないと表明し、今回の会合に出席しませんでした。内戦の長期化で生産が落ち込むリビアも凍結に否定的です。
サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子は、イランを含む全てのOPEC加盟国が参加しない合意には同意しない姿勢を示していたため、協議は暗礁に乗り上げました。アナリストらによりますと、サウジアラビアは市場シェアを失いたくないのだと指摘しました。また、「今回の合意が達成しなかったのは、サウジアラビアの原油政策がイランとの間で続く地政学的対立によって動かされていることを示すものだ」との分析もあります。
原油市場と世界経済に悪影響
増産凍結で合意に至らなかったことを受け、原油相場は急落し、週明け18日の早い段階の取引で一時は6%も下落しました。アメリカ原油相場は同日、クウェートの石油労働者ストで生産が一部停止したとの報で上昇したあと、1バレル=39・78ドルと1.4%安で終了しました。アナリストらは1バレル=35ドルの水準は理にかなう」としていますが、30ドル近辺まで下落する可能性があるとの見方も出ています。
18日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に続落しました。前週末比3.40%安で終えました。週を明けての原油価格の急落と外国為替市場での円高進行で投資家心理が悪化しました。週明け18日の東南アジア市場でも大半が下落しました。
アナリストらによりますと、原油価格を本当に回復させるためには増産凍結でなく、減産が必要となります。しかし、サウジアラビアとイランの緊張関係も長期化している中でこれを実現させるのはさらに難しく、可能性は極めて低いと言わざるを得ません。