ベトナム建国の王「フン王」の命日・ベトナム人の心を培養
ベトナム建国の王「フン王」(Hung Vuong・雄王)の命日である旧暦の3月10日はベトナムにとってもっとも重要な祭日の一つです。ベトナム北部フート省ラムタオ県ヒクォン村にある、フン王を祀る寺院遺跡地区はベトナム民族の発祥地とされています。
ベトナム人は誰もがどこにいても、この日にフン王を祀る寺院遺跡地区に向けて拝む習慣があります。この地区はベトナム民族の団結のシンボルです。
フン王に線香を上げる儀式
民族の団結心の源
ベトナムの伝説によりますと、炎帝神農氏の五代の子孫であるラクロンクァンは山人の仙女であるアウコと結婚しました。アウコは100の卵を生み、100人の子供を作りました。子供たちが大きくなると、ラクロンクァンは50人の子供をつれて海岸のある平野へ、アウコは残りの50人の子供をつれて山地へ行き、別れて暮らすことになりました。
ラクロンクァンに従った50人の子供の中から、フンという王が出て、ヴァンランという国を建国しました。これがベトナム人による最初の国家です。
ベトナム人の考えでは、ベトナム民族はお父さんのラクロンクァンとお母さんのアウコから生まれたので、同じ源から形成されました。そのため、民族の団結及び人々による結びは大事にされており、ベトナムの力の源になっています。フン王の命日はその精神を活かし、民族の大団結を強化する機会とされています。
ユネスコ国連教育科学文化機関のベトナム事務所のカテリン・ムラー・マリン所長は次のように語りました。(テープ)
「ベトナム人はお母さんアウコの卵から生まれて同じ源を持っていると信じています。フン王の命日はベトナム民族の団結と統一の重要性を再確認する日です。
また、仙女アウコと海から来たラクロンクァンとの恋愛から生まれたという統一の中で、100人の子供がいたという多様性を認める重要性も再確認する日です。こうした考えはベトナム人の結束力をしっかりさせるとともに、多様性を守り・発揮するものだと思います。」
フン王を祀る習慣はベトナム人の愛国心につながると考えられています。ホーチミン主席は1954年9月19日にフン王を祀る寺院で兵士たちと懇親した際、、「フン王が建国に苦労してくれたのに対し、私たちは一緒に国を守るべきだ」と述べました。ベトナム人はこの教えを覚えて国の独立のために大きな犠牲を払いました。
フン王を祀る習慣はベトナム社会で大きな役割を果たしています。2012年12月、ユネスコはフン王を祀る習慣を人類の無形文化遺産として認定しました。認定決定書には、「フン王を祀る習慣は先祖への尊敬心を示すもので、その尊敬心から民族のプライド心と結び付きに格上げした。」と書いてあります。
ベトナム人同士の結び付き
ベトナム人の考えでは、フン王を祀る寺院は先祖の象徴であり、神聖な所です。フン王の命日である旧暦の3月10日にフン王を祀る寺院を1度でも訪れて拝むのが生涯の希望です。
フン王を祀る寺院のお祭りに参加する人々の川
その寺院から数百キロ離れたところにあるベトナム中部クァンビン省のキェウ・アインさんは、フン王を祀る寺院を初めてお参りしたが、何とか久しぶりに故郷に帰ったような感じがしたと言います。キェウ・アインさんは次のように語りました。(テープ)
「ベトナム人として先祖のところで、線香を上げてフン王を思い出すことは大きな誇りです。私はみんなと同じように、民族の源に足を運んだことに感動しています。」
フン王の命日は家族が団らんして先祖を思い出す機会でもあります。ハノイに住むグェン・トゥアン・アインさんは次のように語りました。(テープ)
「私はベトナム人で、ベトナムを建国した人の恩恵を忘れてはいけません。人によってその気持ちの表し方は違いますが、我が家では、フン王の命日に、お餅や果物などお供え物を用意して線香を上げます。これは我が家の伝統になっています。」
「どこに居ても、3月10日の命日は覚えていてね」という言葉はベトナム人誰もが心の中にあります。こうした伝統は永遠に継承されてゆくることでしょう。