ベトナム建国の祖「フン王」を祀る信仰・ベトナム人の団結心を培養
ベトナム建国の祖「フン王」(Hung Vuong:雄王)の命日である旧暦の3月10日はベトナムのもっとも重要な祭日の一つです。ベトナム北部フート省ラムタオ県ヒクォン村にある、フン王を祀る寺院遺跡地区はベトナム民族の発祥地とされており、この地区で毎年の旧暦3月10日に行われるフン王の命日を記念する行事が行われます。さらに、フン王を祀る信仰は、ベトナム民族の団結心を培養しています。ベトナム人は誰もがどこにいても、この日にフン王を祀る寺院遺跡地区に向けて拝む習慣があります。
フン王を祀る祭り
フン王を祀る信仰 ベトナム文化の一つ
ベトナムの伝説によりますと、炎帝神農氏の五代の子孫であるラクロンクァンは仙人の仙女であるアウコと結婚しました。アウコは100の卵を生み、100人の子供を作りました。子供たちが大きくなると、ラクロンクァンは50人の子供をつれて海岸のある平野へ、アウコは残りの50人の子供をつれて山地へ行き、別れて暮らすことになりました。
ラクロンクァンに従った50人の子供の中から、フンという王が出て、ヴァンランという国を建国しました。これがベトナム人による最初の国家です。
そのフン王を祀る信仰は、2012年12月6日にユネスコ国連教育科学文化機関によって「世界文化遺産」として認定されました。認定決定書には、「フン王を祀る習慣は先祖への尊敬心を示すもので、その尊敬心から民族の誇りと結び付けて格上げした。」と書いてあります。歴史研究者グエン・カック・トゥアンさんは次のように話しています。
(テープ)
「ベトナムは世界でも特別な国だと思います。ベトナムには54の民族がいます。しかし、全ての民族が、ベトナムという国を建国したフン王を祀っています。ベトナム人の考えでは、ベトナム民族はお父さんのラクロンクァンとお母さんのアウコから生まれたので、同じ源から形成しました。」
民族団結につながるフン王を祀る信仰
ベトナム民族の発祥の地とされている北部フート省だけでも、フン王を祀る施設が326ヶ所あります。そして、全国には1400ヶ所もの施設があります。フン王を祀る信仰はベトナム人の血となり肉となり、ベトナム人の結束力をつくっています。
ベトナム人の考えでは、フン王を祀る寺院は先祖の象徴であり、神聖な所です。フン王の命日である旧暦の3月10日にフン王を祀る寺院を1度でも訪れて拝むのが生涯の希望です。フン王を祀る寺院を訪れたグエン・ヴァン・フォンさんは次のように話しています。
(テープ)
「私はハイフォン市から来ました。フン王を祀る寺院を訪れるのは今回が2回目です。ここへ来るのは民族の源と歴史を思い出すためですよ。」
「どこに居ても、3月10日の命日は覚えていてね」という言葉はベトナム人誰もが心の中にあります。こうした伝統は永遠に継承されてゆくることでしょう。