南米のベネズエラでは、チャベス前大統領の死去から1年になるのに合わせて、記念式典が開かれる一方、政権を引き継いだマドゥロ大統領の経済政策などを批判する大規模な反政府デモが続き、混乱が広がっています。
マドゥロ大統領(写真:ロイター)
ベネズエラの各地では、深刻な物不足などマドゥーロ大統領の経済政策での失敗や、強権的な政権運営を批判する大規模な反政府デモが続き、混乱が広がっています。カラカスでは5日も、大勢の市民が笛やラッパを鳴らしたり、道路に障害物を置いて車の通行を妨害したりして、デモを繰り広げました。反政府デモは3週間余りにわたって続いており、これまでに少なくとも19人が死亡しています。
経済困難
ベネズエラの経済状況に関して、日本経済新聞は「同国の経済はゆっくりと転覆事故に向かう列車のようだ。インフレ率は年56%に達し、物資不足は慢性化している」と伝えています。また、2013年の消費者物価指数の上昇率は年間で56.2%に達しており、世界で有数の高さです。20.1%だった12年の2倍以上の水準です。物不足も深刻で、スーパーなどで商品入荷の情報が伝わると、たちまち顧客が殺到します。為替レートでは公式と非公式の格差も拡大しています。
マドゥロ大統領に対する試練
この1年間、マドゥロ政権は多くの成果を収めてきたといえます。これまで、同国の貧困率は6%に低下しました。そして、人間開発指数で、世界187ヶ国の中で、71位に立っています。しかし、以上指摘された問題は、対立と政権支持率の低下につながっています。ベネズエラの対立は根深く、政府と野党を支持する勢力が国を二分しています。強硬な反米左派だったチャベス氏の死去に伴う昨年4月の大統領選挙では、マドゥロ氏が得票率50.61%で勝利しました。ただ、野党候補は49.12%を集め、僅差でした。低所得者層や地方部は政府側を支持し、一方で高所得者層や都市部では野党支持が目立ち、社会的に分断されています。
革命成果を保護する決意
こうした中、マドゥロ大統領は「辞任する考えはない」と繰り返し強調し、これまでの政策、路線を堅持する決意を示しています。カラカスで5日に行われた式典では、後継者として政権を引 き継いだマドゥロ大統領は「チャベス前大統領は、貧しい人々のための政治を進め、南米をひとつにまとめていこうという動きの象徴でもあった」と演説し、左派路線を継承していく姿勢を強調しました。今後、情勢安定化のために複数の措置を取る方針を打ち出しています。