
先週末、ミャンマーのテイン・セイン大統領は就任後初めてとなるEU=欧州連合歴訪に出発しました。今回、テイン・セイン大統領はノルウェー、フィンランド、オーストリア、ベルギー、イタリアを訪問し、西洋諸国との関係の強化を狙っています。
この訪問は、2012年末にラオスのビエンチャンで開催された第9回ASEM=アジア欧州首脳会議に際し、テイン・セイン大統領と5カ国の指導者が合意した協力計画を具体化させるものとみられます。

テインセイン大統領とノルウェー首相
最初の訪問先ノルウェーでは、双方は開発援助、環境保全、経済協力について協議しました。
また、オーストリアを訪問した際、テイン・セイン大統領は、資金が不足し先進技術が導入されなかったことの原因として、20年にわたり適用されていた対ミャンマー経済制裁を取り上げたうえで、オーストリアに対し、同問題解決で協力を呼びかけました。
これを受け、オーストリアのフィッシャー大統領は民主化に向けた改革を進めている国を常に支持し、援助すると確約しました。更に、ベルギーへの訪問を前に、テイン・セイン大統領はEU=欧州連合に対し、経済制裁を全面的に撤廃するよう要請しました。そして、訪問期間中、欧州諸国の高官らと会談し、人権、経済改革、ミャンマー北部の和平プロセスについて協議するということです。
経済制裁が解除されたばかりで、発展へ向け準備を進めているミャンマーにとって、EU諸国との関係の強化は大きな利益をもたらすといえます。現在、対ミャンマーの欧州諸国の投資額はおよそ35億ドルにとどまっています。西洋諸国との協力の拡大により、ミャンマーは資金、先進技術、管理能力の向上が図られるとしています。
テインセイン大統領とフィッシャー大統領
一方で、地理的条件や資源、豊富な労働力に恵まれているミャンマーはEU諸国にとって魅力的な投資先となっています。
2011年初め、テイン・セイン大統領は就任後、民主化へ向けた改革に踏み切ったきっかけに同国と西洋諸国との関係が改善されてきました。ミャンマー政府は数百人の政治犯を釈放し、報道規制を大幅に緩和したほか、外国投資誘致に取り組んできました。
EUはこうしたミャンマーの改革を評価した上で、2012年4月、武器禁輸令を除いて、ミャンマーに対する制裁を解除しました。EC=欧州委員会のバローゾ委員長は1億ドル以上の開発援助の供与を約束し、ヤンゴン代表事務所を開設しました。
また、同年9月、欧州委員会はミャンマーに対する貿易優遇措置の復活を承認し、2013年からEU市場向けの輸出税と割当の免除を決定しました。また、パリクラブはミャンマーの対外債務の6割以上に相当する60億ドルを免除しました。
昨年6月、ミャンマーの野党党首で、民主化運動の指導者アウン・サン・スー・チーさんは欧州諸国を訪問し、ミャンマーの政治的進展に重要な節目を印したと評されています。
今回、10日間以上にわたるテイン・セイン大統領による欧州歴訪は互恵を基礎とする欧州諸国との協力関係を強化するという意欲を示しています。