ムバラク政権倒壊後のエジプト


エジプトのムバラク前大統領が中東の民主化運動「アラブの春」の中で、30年続いた政権の「王座」から追い落とされてから11日で1年がたちました。しかし、エジプトの現状は安定には程遠いです。暫定統治中の軍最高評議会と民主活動家らの対立は続き、民政移行も未完のままです。

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カイロでのデモ(写真:AFP) 

民政移管への土台となる国会選挙は1月に完了し、ムバラク政権下で弾圧された穏健派イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」系政党が4割以上の議席を確保しました。選挙管理委員会が6月予定の大統領選挙の候補者登録を1カ月前倒しして3月10日に開始すると発表するなど、一定の前進は見られます。 しかし、新憲法作りはこれからで、大統領選の期日も確定していません。一部の民主勢力は軍最高評議会の即時辞任を要求し、騒乱の種になっています。

治安も不安定です。今月1日に北部ポートサイドのサッカー場で、ファン同士の衝突から観客ら74人が死亡する惨事が発生しました。警備態勢への批判や軍政の 陰謀説まで飛び出しました。この事故の影響で首都カイロなどでは抗議デモが発生しました。当局側は催涙ガス弾やゴム弾を使用して鎮圧を図り、保健省によると16人が死亡し、数千人が負傷しました。

さらに、東部シナイ半島でアメリカや韓国の観光客が拘束中の親族の釈放を求める遊牧民(ゆうぼくみん)に誘拐される事件やカイロで国連勤務の外国人女性が射殺される事件も起きました。観光庁によりますと、11年の外国人観光客は前年に比べ32%減少しました。観光収入も28%落ち、「革命」で大きな打撃を受けた形です。

さらに問題なのが、年13億ドル(約1000億円)と言われる軍事援助を受けるアメリカとの関係悪化です。8日、民主化支援などを行っていたアメリカ人のNGO=非 政府組織関係者が「外国資金で騒乱をあおった」などの理由で起訴されました。アメリカ側はクリントン国務長官が援助凍結を示唆し、圧力をかけていますが、決着の見通しはまだありません。

ドアン・チュン

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