この数日、ユーロ圏諸国の経済に関するバッドニュースが相次いで流れています。これにより、ユーロ圏諸国の経済状況が予測よりも悪化するとの懸念が出ています。
欧州の最大の経済国とみられているドイツもユーロ圏債務危機による被害を受ける国となっています。ドイツ連邦経済技術省が7日発表した9月の鉱工業生産指数は110.9ポイントとなり、前月の改定値から1.8%下落しました。製造業が落ち込み、市場予想を大きく下回りました。
ユーロ圏債務危機が欧州最大の経済大国に大きく影を落としています。9月は製造業が2.3%縮小し、そのうち、中間財と資本財はそれぞれ2.2%、3.5%落ち込みましたが、消費財は0.7%増加しています。また、エネルギーも0.3%減少しました。ブレの小さい2カ月ベースで見ると、8月と9月の鉱工業生産は前の2カ月から0.7%縮小しました。
欧州委員会は、この日発表した2014年までの経済見通しの中で、ドイツ経済の来年のGDP=国内総生産成長率を以前の1.7%から0.8%に大きく下方修正しました。
一方、ECB=欧州中央銀行は8日の定例理事会で政策金利を現行の年0.75%で据え置くことを決めました。ドラギ総裁は「成長力は2013年も弱い」と語り、欧州景気の先行きに警戒感を示しましたが、今回はECBの危機対策は見送りました。
当面は金融市場や景気に加え、政治の動きを注視することになります。ドラギ総裁は2013年以降の景気に「下振れリスクがある」と説明しました。
12月にまとめる経済予測で景気認識を下方修正する可能性をにじませました。金融市場では小幅利下げ観測が浮上しています。ユーロ圏17カ国の足元の消費者物価上昇率は政策目標の「2%未満」を上回ります。
景気減速で物価上昇の圧力は弱まるとみられますが、ECBは残り少ない手持ちのカードとなった利下げを温存しました。これまでにECBが打ち出した危機対策で欧州の金融市場が小康状態を保っていることも時間的な余裕を生んでいます。
情勢は楽観できないといえます。南欧は景気回復が遅れ、信用不安が再燃しやすい状態です。それに加え、ドイツが困難な状態に陥っていることは欧州の経済状況を悪化させる恐れがあります。今後も、ユーロ圏債務危機による被害を受ける国のリストがさらに長くなると懸念されています。