
7月19日行われたケリー米国務長官(左)とパレスチナのアッバス議長との会合
(写真:internet)
中東を訪問したアメリカのケリー国務長官は19日、ヨルダンのアンマンで記者会見し、イスラエルとパレスチナが、3年近く中断している中東和平交渉の再開に向け基本合意したと発表しました。ただ、「合意はまだ正式なものではない」とも述べ、今週中にも双方の交渉担当者がワシントンで最終協議を行う予定です。両者の主張の隔たりは大きく、交渉が再開しても実質的な成果につながるかは不明です。
ケリー長官は記者会見で「交渉再開の基本となる合意に達した」と述べましたが、詳しい内容は明らかにしませんでした。ワシントンでの協議には、PLO=パレスチナ解放機構のエラカト交渉局長やイスラエルのリブニ法相が参加する見通しです。
パレスチナ側はこれまでイスラエルが収容するパレスチナ人服役囚の釈放やヨルダン川西岸への入植地建設の凍結、1967年の第3次中東戦争以前の境界を国境の基本とすることなどを交渉再開の前提条件としてきました。
イスラエル側はこれを拒否し、前提条件なしでの交渉再開を要求しました。一方で、イスラエルを「ユダヤ人国家」として承認するよう求めてきましたが、パレスチナ側は、イスラエル建国で生じたパレスチナ難民帰還の否定につながるとして拒否しています。
イスラエルとパレスチナの直接和平交渉は3年近く中断していましたが、仲介のため中東を訪問していたアメリカのケリー国務長官が19日、再開に向けて双方が基本合意したと発表しました。パレスチナ自治政府筋によりますと、ケリー氏は交渉再開の条件として、1993年のオスロ合意以前からイスラエル刑務所に収容されているパレスチナ人100人を含む350人の釈放をパレスチナ側に提案したということです。イスラエル側はパレスチナ人服役囚の一部釈放を表明しましたが、それ以外の対立点についての議論は明らかになっていません。
中東和平をめぐって、イスラエルのネタニヤフ首相は20日夜、大詰めを迎えているパレスチナ和平交渉再開について「不可欠な戦略上の利益だ」との声明を発表し、ケリー国務長官の仲介を歓迎しました。
同首相は「治安上の要求」を放棄しない考えを強調し、引き続きヨルダン川西岸にイスラエル軍を駐留させる必要性を訴えたものとみられます。
一方、 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの報道官は「交渉の再開はイスラエルによる占領を助長するだけだ」と批判する声明を発表しました。
2010年9月から中断している和平交渉の再開は中東和平プロセスの回復に貴重なチャンスと評されていますが、このチャンスを活用するためには、関係各側は対立点について互いに譲歩しなければなりません。