アフリカの南スーダンが20年以上にわたる内戦の末に独立してから9日でちょうど1年を迎えた首都で記念の式典が開かれました。
南スーダンの初めての独立記念日を祝う式典は9日、首都ジュバの中心部にある広場で開かれ、サルバ・キール大統領が演説しました。この中で、サルバ・キール大統領は、隣国スーダンとの間で国境付近の油田地帯の帰属などを巡る対立が続いていることについて、「スーダンとは互いの主権を尊重しながら平和的な関係を築いていく」と述べ、関係改善に努める姿勢を打ち出しました。また、「2015年までに食糧の自給自足を目指す」という目標を掲げたほか、学校や病院などの公共施設を増やし、国民生活の向上に取り組む考えを強調しました。
式典会場には伝統衣装をまとった大勢の市民が詰めかけ、リズミカルな打楽器の演奏に合わせて歌ったり踊ったりしてお祝いムードを盛り上げました。南スーダンでは、日本の自衛隊も参加して国連のPKO=平和維持活動が行われていますが、スーダンとの間ではことし3月から4月にかけて武力衝突も起きています。こうしたスーダンとの対立によって、国内で豊富に産出する石油が輸出できない状態が続くなどで、経済状況は悪化しており、安定した国づくりは進んでいません。
一方、南スーダンは、原油輸出のためのパイプラインがあるスーダンと金銭面での折り合いがついておらず、今年1月に原油生産を停止しました。これにより、国家収入の98%が失われ、物価も急騰しています。さらに2012年4月、油田地帯をめぐりで、武力衝突が発生し、一般住民にも被害が及ぶなど、内戦による悪夢を思い起こさせました。キール大統領は聴衆に「われわれは依然として他国に依存しており、独立は不完全だ」と呼びかけ、経済的な自立を目指す考えを表明しました。
これまで、石油をにらんだ各国の投資により、ジュバの一部はインフラの整備が進みましたが、人口40万人の市内では、住民の多くが今も川から汲んだ水を生活に使うなど、生活環境は厳しい状態となっています。豊富な石油資源がありながら、製油施設がないため、ガソリンなどは輸入に頼りきっています。市内のガソリンスタンドでは、武装した兵士が見守る中、給油を待つバイクの長い列が目立っています。
南スーダンは昨年、住民投票で圧倒的多数が支持して独立を果たしました。20年以上にわたる紛争では約200万人が死亡したと言われています。独立の興奮から1年、生まれたばかりの南スーダンの国家運営は、難しい局面を迎えています。