国連安全保障理事会は8日、悪化するシリア情勢について、フランスとロシアがそれぞれ提案した2つの決議案の採決を行いましたが、ロシアやアメリカが拒否権を行使するなど、いずれも否決されました。シリア問題解決につながる国連安保理の決議が採択されるのはさらに難航しています。
安保理の採決(写真:VNA)
シリア問題への深い不一致
フランスが主導した決議案は、シリアのアサド政権による空爆が続く北部アレッポ上空の軍用機の飛行と空爆の即時停止を要求するものです。アサド政権側が先月攻撃を開始して以来、空爆は激しさを増しています。8日に行われた採決では、安保理の15の理事国のうち、11か国が賛成しましたが、アサド政権を支持するロシアが拒否権を行使して否決されました。シリア情勢をめぐり、ロシアが欧米主導の決議案に拒否権を行使するのは5回目となります。
安保理はロシアが拒否権を発動した直後、同国が対案として提示した決議案の採決を行い、反対9、賛成4、棄権2で否決しました。ロシアの決議案は停戦要求の一方で空爆停止に言及しておらず、イギリスとフランス、アメリカなどが反対しました。
今回の採決は、協力的ない雰囲気の中で行われました。安保理の各国は互いに相手の発表を無視した姿勢を示しました。シリアの国連大使が発表するとき、アメリカ、イギリス、フランスの代表団は会場を出ました。
これはシリア問題について国連安保理の深い不一致を示していると見られています。ロシアのチュルキン国連大使は「どちらの決議案も通らないと、誰もが事前に分かっていたのに採決が行われた。安保理史上、もっとも奇妙な光景の1つだ」として、シリア情勢をめぐって米ロの対立が激化する中、打開策を見いだせない安保理の機能不全を露呈する形となりました。
外交努力への期待
しかし、ロシアのチュルキン国連大使は、シリア問題に関する決議案が否決されたのは外交努力が終わったという意味ではないと強調しました。一方、フランスのジヤン・マルク・エロー外相は、「ロシアとの対話を中止しない」と述べ、シリア問題解決に向けてロシアとの協議を続けると明らかにしました。
国連のパン・ギムン事務総長は、安保理に対し、より民主的かつ透明に活動し、シリア国民が遭遇している悲惨を解決するよう呼びかけました。
アサド政権の盟友であるロシアと、反体制派を支持する西側諸国との溝は、今回の決議案2件の否決によって深まり、シリア問題解決は行き詰まると見られています。