(VOVWORLD) - 国連移民協定は、深刻になっている世界の移民問題の解決に繋がると期待されています。
国連は10日、モロッコのマラケシュで会合を開き、移民への対処に関する初の国際枠組みである国連移民協定を採択しました。しかし、移民受け入れ国の欧米諸国を中心に反対が続出している中で、協定が骨抜きとなることが懸念されています。
国連移民協定を採択した国連会合(写真:AP) |
正式に「安全で秩序ある正規移住のグローバル・コンパクト」と呼ばれるこの協定は、1年半にわたる協議の末、7月に国連でまとめられ、今回のモロッコでの会合で正式に採択されました。移民の人権を強調するこの協定は、正規の移住をより多く、柔軟に認めること、移民が基本的な住民サービスを受けられるようにすること、移民の人身売買を根絶すること、など23項目の目標をたてています。
協定の必要性
この10年、ヨーロッパへの移民を始め、全世界の移民が急増しています。その中で一番多いのが、中東地域とアフリカの武力衝突と貧困を避けたい移民です。国連の統計によりますと、2000年以来、途中で死亡した移民の数は6万人にのぼっており、そのほとんどは海で命を奪われました。そして、現在、中米諸国からアメリカを目指している移民集団という問題が深刻になっている中で、移民への対処に関する国際枠組みの必要性が浮き彫りになっています。
反対意見も
しかし、アメリカ国連代表部は採択に先立つ7日、「国内法や国益に従って移民制度を管理する国家の主権を犠牲にして、国連がグローバルな統治を推し進めようとしている」と合意を改めて批判する声明を出していました。そして、オーストラリアやオーストリア、ハンガリー、ポーランド、チェコなども離脱しました。
国連移民協定は、法的な拘束力はなく、国の主権の制限につながるのではないかという懸念にも配慮して、移民政策は各国が主権に基づいてそれぞれ決めるものだと改めて確認していますが、自国の主権を危うくしかねないなどとして反対に回る国があります。また、これらの国は違法移民と合法移民という概念を区別しないことに懸念を表明しています。そして、合法移民に関する概念についても意見が異なっているのは現状です。
しかし、アメリカなどの反対にもかかわらず、同協定は国連加盟諸国のほとんどの賛成で採択されました。世界で2億5800万人に上る移民について、公平な受け入れや、受け入れ国と送り出し国の連携などを目指す内容を持つこの協定は、深刻になっている世界の移民問題の解決に繋がると期待されています。