西アフリカを中心に感染が広がり続けているエボラ出血熱について、WHO=世界保健機関は、ナイジェリアでは感染拡大が終息したと発表しました。しかし、ナイジェリア政府は、渡航者から新たな感染が広がる可能性も排除できないとして警戒を続けています。
これまで約4555人がエボラ熱で死亡(写真:Kienthuc.net.vn)
WHO はナイジェリアの首都アブジャで20日に開いた記者会見で、「ナイジェリアではエボラ出血熱の感染拡大が終息した」と発表しました。ナイジェリアではこと し7月、リベリアから渡航したエボラ出血熱の患者から感染が広がり、感染やその疑いがある人は20人に上り、このうち8人が死亡しました。
しかし、エボラ出血熱の最大潜伏期間の倍に当たる42日間、新たな感染が確認されなかったため、今回、終息宣言が出されました。WHOは感染拡大を防いだ理由について、患者と接触した人の追跡を徹底的に行い、新たな感染者が確認されると隔離して治療したことが功を奏したとし、「エボラ出血熱の感染を止 められるということを示す目覚ましい事例だ」と評価しています。
しかし、西アフリカでは依然として、ギニア・リベリア・シエラレオネの3か国で感染が広がり続け、感染者の数は早ければ今週中にも1万人を超える恐れがあるなど、状況は厳しさを増しています。一方、アメリカのテキサス州では20日、死亡したリベリア人男性と接触のあった51人に対する経過観察の期間が終了し、新たな感染者は出ませんでした。
エボラ治療への楽観視
こうした中、カナダは20日、エボラ出血熱の拡大阻止に向け、WHOに実験段階のワクチン800本分の発送を始めました。不測の事態に備え三つに分けて送ります。人体への影響を確認するため、アメリカの研究施設で治験が進んでいます。
WHOはワクチンをどう使うか具体的な検討に入りました。このワクチンは「VSV-EBOV」と呼ばれます。実験段階では、感染予防と感染後の 治療の両方で効果があったとされます。
エボラ防止対策への世界の努力
他方、中南米の左派系諸国でつくる「ALBA= 米州ボリバル同盟」は20日、キューバの首都ハバナでエボラ出血熱対策を話し合う首脳会議を開催し、感染が疑われる患者の診断や隔離を適切に行う手順を関係国で協力して確立することなどで合意しました。
また、ラウル・カストロ国家評議会議長は、感染が広がる西アフリカのシエラレオネなどに医療関係者を派遣することを決定しました。ベネズエラやボリビア、ニカラグアなどの参加国は、医療や防疫対策の専門家によるチームをつくり、情報を共有しながら感染防止などに努めるとの声明を発表しまし た。
資金寄付と人道援助の公約の現実化
WHOの予測によりますと、エボラ出血熱を制御するまでは数週間、ひいては数ヶ月もかかるとしています。現在、いち早く、エボラの感染拡大を食い止めることは最重要な課題となっています。
これを実現するため、エボラ出血熱への資金提供が強化されなければなりません。人道援助や資金寄付が後手に回ればエボラ出血熱は世界的なリスクとなりかねないとしています。