
ボストン・マラソンでの連続爆破事件
アメリカ東部のボストンで、現地時間15日午後、開催されていたボストン・マラソンのゴール付近の沿道で2回にわたって大きな爆発があり、少なくとも3人が死亡したほか、170人以上がけがをしました。
事件の直後、オバマ大統領は、ホワイトハウスで声明を発表し、「卑劣で憎むべき行為だ。FBI=連邦捜査局がテロとして捜査している。」と述べました。
その上でオバマ大統領は「実行犯が国際的なテロ組織か、それとも国内のテロ組織か、または悪意ある個人かはまだ分かっていない。手がかりを追って何が起きたのかをはっきりさせるには時間がかかるが、われわれは犯人を捜し出して裁きを受けさせる。」と述べ、事件の解明に全力を挙げる決意を示しました。
事件の直後、16日、EU=欧州連合、NATO=北大西洋条約機構の関係者らは、この爆破事件を批難する声明を出しました。同日、国際陸上競技連盟のラミン・ディアク会長はこの連続爆破事件について「凶悪で卑劣な行為」と非難しました。ロシア、中国、ドイツ、フランス、イラン、アフガニスタン、シンガポール、トルコなどの政府関係者も、この事件を批難するとともに、アメリカ国民に対する追悼のメッセージをあらわしました。
事件が起きたボストンは大学も多く、爆弾テロとは無縁の平和な街でした。しかも、事件は有名なマラソン大会のさなかに起きました。今回の犯行が大勢の人が集まる場所で、多数の犠牲者を出すことを想定していたのは明らかです。爆発が起きたのは、市民ランナーらの完走者がピークを迎えるタイミングとされ、専門家は「最大の被害を狙った計画的なテロ行為」とみています。
2011年のアル・カイーダ指導者ビンラディン容疑者の殺害をふまえ、テロとの戦いの成果を強調してきたオバマ政権にも打撃となります。アル・カイーダの活動が北アフリカなどで活発になり、反米テロも相次ぐなか、今度はアメリカ本土が再びテロの脅威にさらされました。
爆破事件の真相はまだわかりません。事前の犯行予告や犯行声明はなく、情報当局にもテロ攻撃を察知する情報は入っていませんでした。国際テロ組織「アル・カイーダ」などのテロ集団が関与したのかどうかも特定されていません。
今のところ犯行声明は出されていませんが、捜査当局は大勢の市民が集まる場所で、同時に複数の爆発を引き起こすことを狙った計画的なテロ事件とみて捜査しています。
治安当局は実行犯について、国際テロ組織アル・カイーダに関係するイスラム過激派や、アメリカ連邦政府に反発する民兵組織や右翼過激派、といった様々な可能性があるとみて調べを進めています。
16日のアメリカ・ニューヨーク株式市場で、ダウ平均株価は前日の大幅下落から一転して大きく値を上げる展開となりました。前日はボストンのテロ事件などの影響を受け大きく値を下げましたが、16日は住宅関連の統計がとてもよかったため、アメリカの景気先行きに安心感が広がりました。この流れを受け、ダウ平均株価は前日比で157ドル58セント高い、1万4756ドル78セントで取引を終えました。ボストン・マラソンでの連続爆破事件の発生が伝わり、テロへの懸念などから投資家心理が冷え込んで売りが加速しました。
しかし、最も危険なのは10年あまり前の、テロの脅威に、ふたたびさらされたアメリカ市民の心理であることでしょう。