日本政府は11日、沖縄県・尖閣諸島の魚釣島(うおつりしま)など3島を20億5000万円で購入する売買契約を地権者と交わし、国有化しました。これに先立ち、閣議で2012年度予算の予備費から購入費の支出を決定しました。日本政府は購入目的を「周辺海域での航行安全確保と平穏かつ安定的な維持・管理を図るため」としています。購入後は海上保安庁の管理とします。
藤村修官房長官は同日の記者会見で「わが国領土の一部の所有権を国に移転するもので、他国や地域との間で何ら問題を引き起こすものではない」と述べました。さらに、20億5000万円という価格は「再生費用法」という専門的な方法で算定したことを明かし、妥当性を強調しました。交渉にあたり、政府が事前に設定した上限金額だったことも明らかにしました。日本外務省は中国側に国有化の真意を説明し、冷静な対応を求めるために、12日までの予定で杉山アジア大洋州局長を中国の北京に派遣しました。
藤村氏は「両国の国民感情を刺激する難しい状況があるとするなら、誤解や不測の事態を防ぐのが重要だ」と指摘しました。玄葉光一郎外相は「今回の事態で日中間の安定的な発展が阻害されることはあってはならない。しっかり意思疎通を図る」と述べました。また、日本側は中国側を必要以上に刺激することを避けるため、東京都や地元の沖縄県石垣市などが要望している漁船待避施設や無線の中継基地、灯台などは当面建設しない方針です。
ただ、領有権を主張する中国は国有化に反発し、対抗措置をちらつかせており、日中間の対立先鋭化は避けられない情勢です。中国人民解放軍総政治部が刊行する解放軍報は11日付で「日本政府は火遊びをするな」と主張する論説を発表し、そのなかで、「日本政府は、中国側の一貫した反対と厳重な抗議、胡錦濤主席がこのほどAPEC=アジア太平洋経済協力会議で丁重に警告したことを配慮せず、島購入を推し進めた。中国人民の感情を傷つけ、第二次世界大戦が終結して以来の中国の主権に対する最も赤裸々な挑戦だ」と論じました。
こうした中、国際世論は「今後、東北アジア地域における領有権紛争による緊張が増す」との懸念を示しています。