朝鮮民主主義人民共和国の長距離ミサイル発射や核実験をめぐり朝鮮半島情勢の緊張が増している中、韓国政府は30日、同国初の人工衛星搭載ロケット「ナロ号」の3度目の打ち上げを行い、成功したと発表しました。この動きは同地域の情勢を複雑化させ、効果的な外交方法がなければ、その情勢が悪化すると懸念されています。
韓国航空宇宙研究院は同国南部にある宇宙センターからこのロケットを打ち上げました。衛星は宇宙放射線などを観測する予定で、ノルウェーの地上局で信号が受信されたということです。イ・ジュホ教育科学技術相は記者会見で、「韓国型を独自開発し、2020年ごろに我々の技術で宇宙に到達させる」と述べました。
韓国のロケットを打ち上げの様子
ナロ号は2009年8月にも打ち上げましたが、衛星の軌道投入に失敗しました。2010年6月には飛行中に爆発していました。この間、朝鮮民主主義人民共和国がロケットと同じ打ち上げ技術を使う長距離弾道ミサイルの開発を進め、昨年12月には発射に成功しました。南北間で技術格差が開いていると指摘されていました。
韓国の人工衛星打ち上げ成功に対し、朝鮮民主主義人民共和国が反発するのは必至です。朝鮮民主主義人民共和国は長距離弾道ミサイル発射を「人工衛星」打ち上げと主張し、国際社会が韓国の打ち上げを認めるのは「二重基準」と批判しており、3回目の核実験に向けての新たな口実とする可能性があります。
韓国の衛星打ち上げを控えた27日、朝鮮中央放送は、「自主的な衛星打ち上げ」がアメリカなどによる「敵対措置の対象」となるのに対し、「大国の力を借りた韓国の場合は正々堂々」としたものと評価されると強く批判しました。その上で、「こうした極端な状態はもはや耐え難い」とし、実施を警告している3回目の核実験を「民心の要求」と強調しています。
国際世論は「アメリカや韓国などは朝鮮民主主義人民共和国の『人工衛星の打ち上げ』を事実上の長距離弾道ミサイルの発射として、国連安全保障理事会などで非難決議が採択された一方、韓国のロケット打ち上げを受け入れられている」と指摘した上で、「このため、朝鮮民主主義人民共和国が『扱いが不公平だ』と主張して反発を強めることは必至だ」との見方を示しました。
さらに、「最近の関連各側の動きから見れば、朝鮮半島での非核化プロセスがさらに難航する」との懸念の声も上がっています。