楽観視できないシリア和平交渉

国連安全保障理事会は2016年12月31日、ロシアとトルコが仲介するシリア内戦の停戦合意を支持する決議案を全会一致で採択しました。ロシア、トルコ両政府は12月29日に、アサド政権と反体制派武装勢力が、シリア全土の停戦に合意したと発表しました。両政府が主導するカザフスタンの首都アスタナで開催予定の新たな和平協議に期待感を表し、2月8日にジュネーブで再開される国連仲介の和平交渉に向けて「重要なステップ」になると評価しました。

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部族対立が内戦の要因となる

2013年、シリア国内にシリア政府軍(アサド政権)と反体制派という構図で内戦が勃発しました。シリアのアサド大統領はイスラム教のシーア派の分派とされるアラウィー派、政権の主要ポストもアラウィー派で占められています。政策もアラウィー派を優遇するなどしています。これに対してシリア国民の大多数はスンニ派であり、アサド政権に不満を爆発させ、内戦勃発という流れになってきました。シリアの反体制派12組織で構成する「FSA=自由シリア軍」は、1月下旬に予定されている和平交渉に向けた協議を中断すると発表しました。4日前に合意した停戦の条件にシリア政権側が違反したと主張しています。FSAなどの武装勢力によれば、シリア政権側は首都ダマスカス郊外で反体制派の支配地域の包囲を続け、首都に水を供給しているワディ・バラダ地区に対して政府軍が攻撃を仕掛けたとされます。

一方、北西部を拠点とする反体制派の武装勢力は、政権側に違反があったとしてイドリブ近郊の政権側の拠点を攻撃したことを明らかにしました。

反体制派は政権側が停戦を利用して態勢を立て直し、反体制派の支配地域を一つひとつ奪還しようとすることを警戒しています。

様々な武装勢力が存在

シリアでは、FSAのほか、様々な武装勢力は活動しています。反体制派「国民連合」は1月5日、ロシアとトルコの仲介で発効した停戦について、アサド政権による違反を即時やめさせるよう、国連安保理に要請しました。「国民連合」幹部のサミル・ナシャル氏も「アサド政権は『テロリストの掃討』と称して反体制派支配地域の民間人の殺害を続けている」と非難しました。

こうした中、政権側は、過激派組織「イスラム国」(IS)や国際テロ組織アルカイダから分離した「シリア征服戦線(旧ヌスラ戦線)」などを停戦対象外と位置付けており、このことが停戦の維持を困難にさせています。征服戦線は「(シリア問題の)解決策は軍事力による政権打倒だ」と停戦を批判していますが、各地で停戦に参加する反体制武装勢力と共闘関係にもあります。内戦当事者間の相互不信をよそに、停戦を仲介したロシアとトルコは、カザフスタンの首都アスタナで和平協議を開く準備を続けています。シリア内戦をめぐってはこれまでも国連や米露が主導し、停戦合意に至りましたが、戦闘が収まらず、短期間で事実上崩壊しています。今回も反体制派の一部が枠組みに参加しておらず、和平協議の行方は予断を許しません。


 

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