アメリカのオバマ大統領は17日、半世紀以上も外交関係が断絶しているキューバとの国交正常化に向けた協議を開始すると発表しました。電撃的な国交正常化交渉開始の知らせに、キューバ国内外で、歓迎の声が出ています。これはアメリカとキューバとの関係の歴史に、新しいページを開くものと評価されています。
米国とキューバの首脳らが関係正常化を決定(写真:AP)
今回の発表は、過去にキューバ危機で、核戦争の瀬戸際までいったアメリカ・キューバ関係の歴史的転換点と言えます。
関係正常化へ向けての最初の動き
アメリカ政府がキューバとの国交正常化交渉の開始で合意したことを受けて、キューバで投獄されていたアメリカ人男性が釈放され、17日、アメリカに帰国しました。
一方、アメリカ政府当局者によれば、アメリカ・キューバ間の合意に基づき、アメリカは、キューバとの外交関係の再開とともに、金融規制の変更、両国間の渡航・貿易規制の緩和に踏み出します。
ホワイトハウスによれば、外交関係の再開を受けて、 アメリカはハバナに大使館を設置するとともに、両国は移民や麻薬対策、環境保護、人身売買など共通の関心事について協力します。
国際世論の反応
アメリカとキューバが関係正常化を決めたことを受け、国際社会は歓迎の声を上げています。国連の潘基文事務総長は17日の記者会見で、「オバマ大統領とキューバのラウル・カストロ議長が重要な一歩を踏み出した」と称え、「心から歓迎する」と述べました。
発表については事前に知らされていたということで、「国連は良好な隣国関係の構築を支援する用意があ る」と語りました。一方、ローマ法王庁は17日、ローマ法王フランシスコが「アメリカとキューバが国交を結ぶという歴史的な決断を下したことを祝福する」との声明を発表しました。
政策変化
キューバの孤立化を目指してきた従来の政策に関し、オバマ大統領はホワイトハウスからのテレビ演説で、「過去50年間を振り返ると、対キューバ孤立化政策は効果を上げなかった」と断じ、「新たなアプローチをとるときが来た」と訴えました。
一方、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長は17日、国民に向けたテレビ演説を行い、「交渉を通じて、多くの問題の解決策を分かり合うことができた」として、「お互いの国民のために、特に渡航や郵便、通信の分野で規制を緩和するべきだ」と話しました。
こうした中、アナリストらは、「この決定は望ましいものの、ネックになるのはアメリカ国内の政治状況だ」と指摘した上で、「キューバへの制裁の完全解除には議会の同意が必要だが、多数を握る野党・共和党の議員らは早くも制裁解除に反対する構えだ」と分析しています。