米国大統領のイラン核合意離脱表明

(VOVWORLD) -アメリカのトランプ大統領は8日、2015年にアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国、及びロシアの6カ国とイランが結んだ核合意からの離脱を表明しました。
米国大統領のイラン核合意離脱表明 - ảnh 1   トランプ米大統領THX/TTXVN

核合意に伴って解除した対イラン制裁を全て復活させる大統領令に署名しました。これは合意維持を訴えてきた欧州各国との関係に溝ができるほか、イランの対応次第では地域情勢がいっそう緊張が増す可能性があります。

トランプ大統領は8日午後2時すぎ(日本時間9日午前3時すぎ)からホワイトハウスで演説し、「今の核合意のもとではイランの核保有を止められない。核合意は根本的に欠陥だ」と述べ、前のオバマ政権が結んだ核合意から離脱する考えを明らかにしました。

中東地域での危機の恐れ

トランプ氏は演説で、イランを「テロ支援国家」と名指しした上で、核合意を「二度と結んではならない恐ろしく一方的なディール(取引)」と酷評しています。現状の核合意ではイランの弾道ミサイル開発を制限できず、経済制裁解除によって得た資金でイランが「核搭載可能なミサイルを開発しテロ組織を支援し、中東地域に無秩序をもたらしている」と非難しました。さらに、核合意から離脱した上で「最高レベルの経済制裁を発動する」との考えを示しました。

イランと敵対するイスラエルのネタニヤフ首相は、トランプ大統領の核合意離脱表明に「勇気ある決断を完全に支持する」と手放しで喜びました。サウジアラビア外務省も、アメリカの離脱を歓迎する声明を出しました。

しかし、トランプ大統領の決定は、新たな危機状況に中東地域を陥らせ、シリアでの衝突や、イランとイスラエル、アラブ諸国との対立などの緊張情勢を激化させる恐れがあります。

核合意に離脱の条項が設けられていないにもかかわらず、一方的に通告して経済制裁の再開を決めた結果、イランが反発して核開発を再開し、逆に核の脅威を増大させる恐れがあります。

米国の威信を失墜、EUとの矛盾を深刻化させ

トランプ大統領の核合意離脱表明は、アメリカに何らかの大きな利益をもたらすかどうか分かりませんが、当面、アメリカのグローバルな威信を失墜させつつあります。

アメリカ第一のトランプ氏が、国際的な約束すら守らない姿勢を鮮明にしたことで、朝鮮民主主義人民共和国が不信感を募らせ、非核化の交渉に悪影響を与える懸念もあります。

トランプ大統領のイラン核合意からの離脱表明を受け、EU=欧州連合のトゥスク大統領は、ブルガリアの首都ソフィアで16日~17日に予定されているEU非公式首脳会議で対応を協議する考えを示しました。合意当事国のイギリス、フランス、ドイツを含め、核合意の継続へ「欧州の結束したアプローチ」を打ち出したい考えです。

核合意の立役者とされるEUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は8日、EUは「合意の完全かつ実効性のある履行」の継続を支持すると強調しました。「核合意はいかなる一国の手中にあるわけではなく、一方的に終わらせることはできない」と述べました。

アメリカのイラン核合意離脱は、アメリカとロシア、及び中国との緊張を高める恐れもあると指摘されています。

2年前に、世界各国は、イランの核問題に関する包括的共同作業計画が締結されたことを歓迎し、核兵器のない世界に向けた努力に良いスタートとして見なしていました。しかし、アメリカの離脱で、イラン核合意は政情不安を招くことでしょう。

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