22日、アメリカのオバマ大統領はワシントンをたち、29日までの日程で、日本や、韓国、マレーシア、フィリピン4か国歴訪をスタートさせました。アジア太平洋地域を重視する「リバランス(再均衡)政策」の本気度を改めて地域に示すことに主眼を置き、アジアにおけるアメリカの威信を保ちたい考えです。

(写真:AFP)
オバマ政権は昨年の秋、シリアへの軍事行動を宣言しながら腰砕けに終わり、最近ではロシアによるウクライナ南部クリミア編入を既成事実化させてしまいました。今回の歴訪ではアジアへの関与をより明確にし、朝鮮民主主義人民共和国の核開発や中国の海洋進出にさらされる各国の不安払拭を狙って、中国をけん制する構えです。
また、TPP=環太平洋経済連携協定も重要な目的と見られます。アメリカのフロマン通商代表は先週、ワシントンで日本の甘利経済再生担当大臣とTPPを巡る閣僚級協議を行いましたが、牛肉や豚肉の関税の取り扱いなどで意見の隔たりが埋まりませんでした。
アメリカ通商代表部は、23日からのオバマ大統領の日本訪問に合わせ、フロマン通商代表も日本を訪問すると発表し、日米首脳会談の直前までTPPを巡る日米間の協議の前進を目指すことにしています。
アジアが世界経済の中心になりつつある背景の中でオバマ大統領が打ち出すアジア重視戦略には、経済成長が続くアジアとの関わりを深め、アメリカ経済を後押しする狙いがあります。
オバマ氏は2009年11 月の日本訪問を機に行った演説で、ハワイで生まれ、インドネシアで育った自らの経歴や少年時代に日本を訪れた思い出を披露しながら、「アメリカはアジア太平洋国家として関与を続ける」と宣言しました。
オバマ政権はこのアジア重視戦略を「中国の囲い込みを意図したものではない」と繰り返し説明しています。アメリカ経済にとって世界2位の経済大国となった中国との協調関係の維持は死活問題だからです。
長い目でみた経済・戦略上の理由から、アメリカが中東での戦争や欧州の権力闘争への対応よりも、アジアにおける地位を強固なものにするのに時間を使おうとするのは理にかなっていると評されています。