英国のメイ首相は17日、EU=欧州連合離脱の交渉方針に関する演説を行い、EU離脱に伴い単一市場からも脱退する方針を明らかにしました。
メイ首相 (写真提供:AFP)
単一市場残留に向け妥協案を探るのではとの憶測を否定し、ハードブレグジット(強硬離脱)を目標に掲げました。欧州市場への最大限のアクセス確保を目指すとともに、欧州以外の国々と独自のFTA=自由貿易協定を締結していく構えで、大陸からの移民流入を制限する姿勢も打ち出しました。
ハードブレグジット
ハードブレグジットとは英国のEU離脱に伴って、欧州の単一市場へのアクセスを失うことです。メイ首相はEUとの対等な関係を探っていくと強調し、「私が提案していることは、EU単一市場に留まることを意味しない」とした上で、「包括的で大胆、かつ野心的なEUとの自由貿易協定を通じて、EUへの可能な限りのアクセスを目指す」と表明しました。一定分野で現在の単一市場の取り決めが維持される可能性にも言及したほか、最終的な離脱案について、議会での承認を求める考えも示しました。首相は演説のなかで、ノルウェーなどEUとFTAを結ぶ国々が利用している既存の枠組みを導入するつもりはないと言明、ソフトブレグジット(穏健離脱)を明確に否定しました。
離脱交渉については、移民流入の制限、欧州司法裁判所(ECJ)の管轄からの離脱、EU関税同盟の正式加盟停止など12の優先事項を提示しました。関税同盟への加盟は英国独自の貿易協定締結の妨げとなっているとしたほか、欧州とはなるべく摩擦のない形で貿易を維持したいとの考えを明らかにしました。
EU離脱、「現実的なもの」
メイ首相によるEU単一市場からの離脱方針の表明を受け、EUのトゥスク大統領は自身のツイッター上で「悲しいプロセスだが、離脱に向けた方針の表明として、これまでより現実的なものだ」と評価しました。他方、ドイツのメルケル首相は18日、イタリアのジェンティローニ首相との会談後に記者会見し、EU単一市場からの撤退を表明したメイ首相の演説に関し、今後の離脱交渉について「欧州が分断されるようにならないことが重要だ」と述べ、英国を除くEU27カ国の結束を図る考えを示しました。ジェンティローニ氏は英国との友好関係の継続は変わらないとの認識を示しました。
メイ首相は、今後2年間で離脱条件に関して合意し、新規則は必要に応じて段階的に導入したいとしました。また、「EUとの関係が今後変化するに伴い、ビジネスが危機に陥ったり、安定性が脅かされることは誰の得にもならない。われわれは破壊的な危機の回避を求めており、英国とEUが新たな関係に移行する上で必要となる新たな取り決めを結ぶために全力を尽くす」と述べました。
一方、英国最高裁は24日に離脱通告に関する議会承認の是非を判断する予定です。メイ氏はEU離脱の最終合意について議会承認を求めるとも明言しました。議会の穏健派にも配慮しながら、いかにEUとの交渉を有利に進めるゆくかも焦点になります。