英国のEU離脱をめぐる問題


イギリスのメイ首相がEU=欧州連合からの離脱をEUに正式通告する文書に署名した3月28日はイギリス・EU関係の歴史的な節目の日となりました。その離脱は複数の交渉を含む複雑なプロセスで、2年間かかる可能性があります。そして、EUとイギリスの間には立場の相違点が沢山ある中で、双方が期待する結果を収めることは簡単ではないと予測されています。


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(写真:インターネット)

離脱手続は正式に開始されましたが、最初の交渉を行うためには、EU加盟27カ国が交渉事項の優先順位を定めなければなりません。EUは31日に交渉方針を定めた指針の素案を加盟国へ送る予定ですが、最初の交渉は5月か6月に行われる見通しです。


スムーズな離脱を望む英国

メイ首相は29日、EUに離脱を通知した直後に議会で演説し、離脱交渉について「『無理なことだ』と言うこともできるが、イギリス精神の力を維持できると信じて交渉に臨むこともできる」と述べ、楽観的な姿勢を持つべきだと強調しました。

また、メイ首相は28日夜、欧州理事会のドナルド・トゥスク議長のほか、ジャン・クロード・ユンケル欧州委員会委員長、ドイツのアンゲラ・メルケル首相とそれぞれ電話会談をしました。双方は、イギリスが離脱後もEUの同盟国であり続けることや、離脱に関する交渉が積極的かつ建設的に行われるべきであることなどで一致しました。

さらに、イギリス政府は、およそ500億ポンド相当のEU離脱費用や、国内に住むEU加盟国の国民とEU域内に暮らすイギリス国民の権利の保障などに関し、「早期の合意」を求めたいと主張してきました。


妥協しにくい不一致点

EUとイギリスは建設的な姿勢を示していますが、実際、双方の間には多くの不一致点が存在しています。EUの指導者らは、「イギリスの離脱を阻止したくない」と発言していますが、他の加盟国も離脱することに繋がる前例を作り出したくないことから、厳しい条件を課す見通しです。


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(写真:ロイター)

したがって、交渉は難航が予想されています。焦点とみられるのはイギリスのEU拠出金の負担とEU市民の権利保障です。EU側としては、イギリスは拠出に同意済みで未払いの事業費などの支払いを求める構えです。

イギリスに住むEU加盟国民と他のEU諸国に住むイギリス人合わせておよそ400万人の権利保障については、双方が「最優先事項」に位置づけていますが、イギリスでは移民の受け入れ削減を望む声が強く、EUの他の国の国民が福祉手当などを受け続けることには批判があります。

また、ドイツのメルケル首相は、「まず長年の関係をどう解消するか決めるべきだ」と述べ、離脱条件と通商など将来の関係を並行協議するイギリスの要求を拒否する考えを示しました。

EU基本条約「リスボン条約」が定める交渉期間は原則2年です。延長するためには全加盟国の合意が必要ですが、現時点ではイギリス、EU側ともに延長を求めない方針です。しかし、以上指摘した問題により、交渉は難航し、合意を達成するためには双方の妥協が求められると評されています。


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